内 容
戦争と結核と失恋による喪失感という外と内の暴風雨に挾撃されて恐怖と不安の中から美しい幻夢の世界を紡ぎ出していった明治30年代青年層の精神風景を、 初期漱石、寅彦、三重吉、折蘆等の作品の丹念周到な解読を通じて、あざやかに浮かび上がらせる力作評論。
目 次
Ⅰ 夏子哀話と漱石
〈先立つ女〉をめぐって ——「水底の感」と「琴のそら音」
〇〇子と金田富子とのあいだ ——『吾輩は猫である』の面白さについて
Ⅱ 感染の場としての文章会
不如帰の時代
夏目家文章会の力学
Ⅲ 不如帰の時代の青年像
野村伝四
水底に魅入られた青年たち —— 三重吉・能成・折蘆
Ⅳ 『不如帰』の水脈
海辺にての物語 —— 家庭小説の諸相
結核をめぐる時差の問題
Ⅴ 漱石における不如帰型物語の末路
三四郎の変貌 ——『三四郎』から『それから』へ
代助のゆくて —— さようなら青春、さようなら水底
あとがき