内 容
政治の季節が終わり、蘇峰が新たな理想を求め、独歩が無名の人民の経験を「記憶せよ」と呼びかけるうちに、文学は切実な営みとして「発見」された。内面の告白や青年の煩悶をひとたび正面から受け止め、経世の世にあって人生を問いかけていった知識人の挑戦を、端正に描き出す力作。
目 次
凡 例
序 章 明治期の政治と文学
1 新思想としての文学
2 政治から文学へ
3 徳富蘇峰とその周辺
4 高山樗牛から自然主義へ
5 本書の方法
第Ⅰ部 政治と文学の紐帯
第1章 徳富蘇峰の文学振興
1 はじめに
2 美文学の庇護者
3 蘇峰と政治小説
4 『国民之友』の文学厚遇
5 文学と宗教の政治的貢献
6 「非文学者」の業績
第2章 経世と詩人論
—— 徳富蘇峰の批評活動
1 はじめに
2 評論「新日本の詩人」
3 宮崎湖処子『帰省』
4 講演「新日本の詩人」
5 経世の再設定
第3章 明治中期、排斥される馬琴
—— 松原岩五郎の事例
1 はじめに
2 内田魯庵と松原岩五郎
3 市談の開拓者
4 貧民窟探訪記事
5 明治中期の馬琴批判
第4章 平民主義の興隆と文学
—— 国木田独歩『武蔵野』論
1 はじめに
2 「忘れえぬ人々」の旅
3 平民主義と観察
4 『武蔵野』の記録者
5 独歩と平民主義
第5章 民友社史論と国木田独歩
——「人民の歴史」の脈絡
1 はじめに
2 人民の歴史
3 経世家風の尺度
4 「武蔵野」「源おぢ」「忘れえぬ人々」
5 独歩の出発
第6章 人生を思索する精神
—— 1890年代の内村鑑三
1 はじめに
2 基督教文学時代
3 悲哀と涙
4 「流竄録」の博愛
5 内村と明治文学史
第Ⅱ部 文学の卓越化
第7章 告白体の高山樗牛
1 はじめに
2 「美的生活を論ず」
3 徳富蘇峰の失墜
4 姉崎嘲風宛の書簡
5 樗牛から自然主義へ
第8章 藤村操、文部省訓令、自然主義
1 はじめに
2 1903年の動向
3 1906年の動向
4 独歩の再評価
5 自然主義運動の背景
第9章 明治後期文壇における告白
—— 梁川熱から自然主義へ
1 はじめに
2 『病間録』の反響
3 『病間録』の告白
4 自然主義と告白
5 自然主義の連帯
第10章 自然主義と教育界
—— 正宗白鳥「何処へ」を中心に
1 はじめに
2 学生風紀問題
3 「何処へ」と教育界
4 青年の内面
5 独歩から白鳥へ
6 現実らしさの背景
第11章 政治の失墜、文学の隆盛
—— 1908年前後
1 はじめに
2 文学者の顕彰
3 現実的政治家的態度
4 『春』と「罠」
5 「不健全」の擁護
第12章 自然派ぶりの漱石
1 はじめに
2 考へさせる小説
3 厭世家の告白
4 『心』から『明暗』へ
5 抵抗としての内省
あとがき
初出一覧
図版一覧
索 引
受 賞
書 評
『日本文学』(第66巻第2号、2017年2月、評者:山田俊治氏)
『みすず』(第656号、2017年1・2月合併号、評者:竹内洋氏)
『日本近代文学』(第94集、2016年5月、評者:関谷博氏)
『図書新聞』(第3246号、2016年3月12日付、評者:中丸宣明氏)
『図書新聞』(第3235号、2015年12月19日付、評者:石原千秋氏)