内 容
19世紀後半から20世紀にかけて、かつてないほど相互に交通しあった日本と中国 —— そこに生じた「漢文脈」の新たな展開と可能性を、書くことと読むことの場に即して捉え、文学史・小説・翻訳・作文などをめぐる様々な試み・思考・葛藤を通して、近代の再考を促す画期的論考。
目 次
はじめに
第Ⅰ部 〈支那〉と〈日本〉
第1章 文学史の近代 —— 和漢から東亜へ
1 〈文学史〉の始まり
2 〈和漢〉と〈支那〉
3 〈日本〉の確立
4 〈東亜〉へ
第2章 「支那」再論
1 呼称としての〈支那〉
2 〈和漢〉の解体と〈支那〉
3 梁啓超の〈支那〉
第Ⅱ部 梁啓超と近代文学
第3章 新国民の新小説
—— 近代文学観念形成期の梁啓超
1 通俗のための小説
2 国民のための小説
3 文学雑誌の誕生
4 進化する文学
第4章 「小説叢話」の伝統と近代
1 中外の比較
2 進化の中核
第5章 官話と和文
—— 梁啓超の言語意識
1 母 語
2 粤語と広東
3 漢民族意識と文言そして官話
4 日本語
第Ⅲ部 清末=明治の漢文脈
第6章 小説の冒険
—— 政治小説とその華訳をめぐって
1 『佳人之奇遇』の華訳
2 〈小説〉の文体
3 『経国美談』の様式
4 〈正史〉と〈小説〉
5 〈小説〉の〈近代〉
第7章 『浮城物語』の近代
1 新聞紙の小説
2 「報知叢談」から「報知異聞」へ
3 ルビと挿図
4 自叙体
第8章 明治の游記
—— 漢文脈のありか
1 『木屑録』
2 作文の手本
3 景・史・志
4 『航西日記』
5 漢文脈のゆくえ
第9章 越境する文体
—— 森田思軒論
1 欧文直訳体
2 意趣と風調
3 漢文脈の核心
第Ⅳ部 今体文のメディア
第10章 『記事論説文例』
—— 銅版作文書の誕生
1 『記事論説文例』
2 銅版印刷
3 作文書の系譜
4 模倣と普及
第11章 作文する少年たち
——『穎才新誌』創刊のころ
1 『学庭拾芳録』
2 『穎才新誌』
3 作文の虚実
終 章 象徴としての漢字
—— フェノロサと東洋
1 日本美術との邂逅
2 フェノロサの文学観
3 詩の媒体としての漢字考
注
あとがき
索 引
受 賞
書 評
【毎日新聞書評】
【読売新聞書評】
【毎日新聞・今年の三冊】