内 容
重なりあう科学とフィクション ——。フロイト精神分析や「無意識」の受容は、日本における「心」の認識をどのように変化させたのか。民俗的な霊魂観と近代的な心身観がせめぎあう転換期を捉え、催眠術の流行や文学における表象をも取り上げつつ、「無意識」が紡ぎ出した物語をあとづける「心」の文化史。
目 次
はじめに
第Ⅰ部 「無意識」の時代
第1章 「霊」から「無意識」へ
はじめに
1 「心」の変容
2 「意識」と「精神」
3 対抗運動のなかの「精神」
4 二葉亭から漱石へ
第2章 意識の底には何があるのか
—— 催眠術・霊術の言説戦略
はじめに
1 竹内楠三の転向
2 古屋鉄石の流転
3 意識の底には何があるのか
第3章 超感覚の行方
—— 催眠術・千里眼・テレパシー
はじめに
1 催眠術とテレパシー
2 超感覚の行方
おわりに
第4章 変容する夢
はじめに
1 夢をめぐる言説空間の再編成
2 大正期の「精神分析」受容
3 夢の場としての「無意識」
4 神経病の時代のなかで
第5章 「心理研究」とフロイト精神分析
はじめに
1 フロイト精神分析の紹介
2 「変態心理」の刊行とその影響
3 混乱する「無意識」
おわりに
第Ⅱ部 芥川龍之介と大正期の「無意識」
第6章 消された「フロイド」
——「死後」をめぐる疑念
はじめに
1 「自殺」という物語
2 消された「フロイド」
3 テクストのなかの「フロイド」
4 芥川と「無意識」
第7章 夢を書く
——「奇怪な再会」まで
1 夢を書くこと
2 芥川と夢
3 「奇怪な再会」における夢
おわりに
第8章 「無意識」という物語
——「海のほとり」を中心に
はじめに
1 夢の女をめぐって
2 『湖南の扇』と「無意識」
3 「無意識」という物語 ——「年末の一日」「海のほとり」「蜃気楼」
4 「無意識」という恐怖
第9章 最後の夢小説
——「夢」と「人を殺したかしら?」と
はじめに
1 神経・風景・夢
2 二つの夢
第10章 メーテルリンクの季節
—— 芥川と武者小路実篤のあいだ
はじめに
1 「メーテルリンクの季節」のなかで
2 メーテルリンク受容の光と影
第11章 怪異と神経
——「妖婆」という場所
はじめに
1 怪異の場
2 大正期日本の「神下ろし」
3 消失する「神経」
第12章 さまよえるドッペルゲンガー
——「二つの手紙」と探偵小説
はじめに
1 芥川と探偵小説
2 「二つの手紙」—— ドッペルゲンガーと探偵小説
おわりに —— さまよえるドッペルゲンガー
補 論 「無意識」の行方
—— 芥川から探偵小説へ
はじめに
1 先導する小酒井不木
2 都市の孤独と「心」の闇
終 章
注
あとがき
図版一覧
索 引
書 評
『週刊読書人』(2014年7月25日号、評者:石原千秋氏、長山靖生氏)