内 容
近代と向き合い、格闘し、支えた思想家たちの思考のエッセンスを平易に解説、自由と公共をめぐる思想的遺産を縦横に論じて、現代社会をよりよく考える基盤を指し示す。政治・経済・哲学の枠を超え、近代社会の通奏低音をなす思想の姿を浮かび上がらせた、刺激に満ちた最良の道案内。
目 次
序 章 社会思想とは何か
1 社会思想の歴史とは何か
2 社会思想史の方法
3 「時代」と「思想」の文脈
4 社会思想の基本問題 ——「自由」と「公共」の相関
第1章 マキアヴェリの社会思想
1 「時代」の文脈 —— 市場経済の復活と近代国家の胎動
2 「思想」の文脈 —— イタリア・ルネサンスの人文主義
3 マキアヴェリの「問題」
4 『君主論』の人間観
5 『ディスコルシ』の共和制論
6 マキアヴェリにおける「自由」と「公共」
第2章 宗教改革の社会思想
1 「時代」の文脈 —— 近代国家の出現と市場経済の発展
2 「思想」の文脈 —— ルネサンスから宗教改革へ
3 宗教改革思想の「問題」
4 ルターの信仰義認論と万人司祭主義
5 カルヴァンの予定説と資本主義の精神
6 宗教改革思想における「自由」と「公共」
第3章 古典的「社会契約」思想の展開
1 「時代」の文脈 —— 国際商業戦争の幕開け
2 「思想」の文脈 —— 科学革命から自然法学へ
3 社会契約思想の「問題」
4 ホッブズの機械論的人間観と絶対主権の理論
5 ロックの理性的人間観と政治社会論
6 社会契約思想における「自由」と「公共」
第4章 啓蒙思想と文明社会論の展開
1 「時代」の文脈 —— 文明社会の発展
2 「思想」の文脈 —— フランスとスコットランド
3 啓蒙思想の「問題」
4 フランス啓蒙の文明社会像 —— ヴォルテールから重農主義まで
5 スコットランド啓蒙の文明社会像 —— ハチソンとヒューム
6 啓蒙思想における「自由」と「公共」
第5章 ルソーの文明批判と人民主権論
1 「時代」の文脈 —— 文明社会の危機
2 「思想」の文脈 —— 啓蒙から文明批判へ
3 ルソーの「問題」
4 『社会契約論』における一般意志と人民主権
5 ルソーにおける「自由」と「公共」
第6章 スミスにおける経済学の成立
1 「時代」の文脈 —— 文明社会の危機を超えて
2 「思想」の文脈 —— 啓蒙から社会科学へ
3 スミスの「問題」
4 『道徳感情論』における共感と道徳秩序
5 『国富論』における分業・市場・富裕
6 スミスにおける「自由」と「公共」
第7章 「哲学的急進主義」の社会思想
—— 保守から改革へ
1 「時代」の文脈 —— 二重革命のはじまり
2 「思想」の文脈 —— バークとマルサス
3 哲学的急進主義の「問題」
4 功利主義の思想 —— ベンサムとジェームズ・ミル
5 古典派経済学の思想 —— リカードウの『経済学原理』
6 哲学的急進主義における「自由」と「公共」
第8章 近代自由主義の批判と継承
—— 後進国における「自由」
1 「時代」の文脈 —— 二重革命の光と影
2 「思想」の文脈 —— カント、フィヒテ、ロマン主義における自我の発見
3 ヘーゲルの「問題」
4 ヘーゲルの学問論と市民社会論
5 ヘーゲルにおける「自由」と「公共」
第9章 マルクスの資本主義批判
1 「時代」の文脈 —— 資本主義の危機
2 「思想」の文脈 —— マルクス以前の社会主義
3 マルクスの「問題」
4 哲学批判 ——『経済学・哲学草稿』から『ドイツ・イデオロギー』へ
5 『資本論』の資本主義批判
6 マルクスにおける「自由」と「公共」
第10章 J・S・ミルにおける文明社会論の再建
1 「時代」の文脈 —— 資本主義の変化と民主主義の進展
2 「思想」の文脈 —— 哲学的急進主義の再検討
3 ミルの「問題」
4 哲学と道徳の革新
5 社会主義の可能性
6 ミルにおける「自由」と「公共」
第11章 西欧文明の危機とヴェーバー
1 「時代」の文脈 —— 帝国主義と大衆社会
2 「思想」の文脈 —— 実証主義の諸潮流
3 ヴェーバーの「問題」
4 『職業としての学問』と近代合理主義の起源
5 『職業としての政治』と民主主義の運命
6 ヴェーバーにおける「自由」と「公共」
第12章 「全体主義」批判の社会思想
—— フランクフルト学派とケインズ、ハイエク
1 「時代」の文脈 —— 世界大戦、ロシア革命、大恐慌
2 「思想」の文脈 —— 全体主義批判の諸相
3 全体主義批判の「問題」
4 『啓蒙の弁証法』の資本主義文明批判
5 ケインズとハイエクにおける2つの自由主義
6 全体主義批判における「自由」と「公共」
第13章 現代「リベラリズム」の諸潮流
1 「時代」の文脈 —— 社会主義体制の成立と崩壊
2 「思想」の文脈 ——「歴史の終わり」か「文明の衝突」 か
3 現代リベラリズムの「問題」
4 ハーバーマスとロールズ
5 ロールズにおける公正としての正義
6 現代リベラリズムにおける「自由」と「公共」
終 章 社会思想の歴史から何を学ぶか
1 方法からの問い
2 現代における「自由」と「公共」の可能性
あとがき
参考文献
主要著作年表
事項索引
人名索引
書 評
『経済学史研究』(57巻1号、2015年7月、評者:安藤隆穂氏)
『週刊ダイヤモンド』(2014年5月31日号、評者:若田部昌澄氏)
関連書
『イギリス思想家書簡集 アダム・スミス』 篠原 久・只腰親和・野原慎司 訳
『ヒューム 道徳・政治・文学論集[完訳版]』 デイヴィッド・ヒューム 著/田中敏弘 訳
『アダム・スミス 法学講義 1762~1763』 水田 洋・篠原 久・只腰親和・前田俊文 訳
『ハイエク、ハイエクを語る』 S.クレスゲ、L.ウェナー 編/嶋津 格 訳
『マキァヴェリアン・モーメント』 J.G.A.ポーコック 著/田中秀夫・奥田 敬・森岡邦泰 訳
『世俗の時代』(上下巻) チャールズ・テイラー 著/千葉 眞 監訳
『自我の源泉』 チャールズ・テイラー 著/下川 潔・桜井 徹・田中智彦 訳