内 容
問題を抱えたこどもたちの避難所として、がんばりつづける「保健の先生」。それにしてもなぜこんなに苦しいのか。性暴力にあった生徒の問題に向き合わざるをえなくなった著者が、養護教諭の「無力さ」の歴史的・社会的な由来を徹底的に探究・解剖した果てに、たどりついた答えとは。次世代にむけたあり方の再定義へといたる希望の書。
目 次
序 章 養護教諭という存在を研究する
1 「当事者」として「自己エスノグラフィー」をつづる
2 他者によって「周辺化」される養護教諭
3 本書の構成
第1章 「同化」という視点
1 「養護教諭」研究の軌跡
2 「同化」とはなにか
3 「同化」と養護教諭の関係
第2章 職制運動時代の学校看護婦たち
——「身分の確立」をめざして
1 職制運動のこれまでの評価
2 職制運動にいたる背景
3 職制運動のはじまり
4 白熱する職制運動
5 職制運動の意味
第3章 1960年代の養護教諭
—— アイデンティティを求めて
1 養護教諭にとっての1960年代
2 資料収集と分析方法
3 養護教諭の自己像
4 養成者たちと学校関係者たちの養護教諭像
5 養護教諭の位置に関わる二つの要素
6 養護教諭団体の動向
第4章 現代の養護教諭
—— 同化をこえて
1 試される養護教諭
2 ききとり調査
3 養護教諭の「性被害」観と生徒の「被害」感情
4 「性暴力」をきくという重荷
5 守秘義務とプライバシー
6 「問題をかかえる」生徒が性暴力にあったとき
7 共感しすぎる、共感する、共感しない、共感できない
8 学校におけるケアのジレンマ
9 支援の「正しさ」を測る基準
終 章 再び「自己エスノグラフィー」としての総括
—— 養護教諭の再構築に向けて
1 「がんばる」養護教諭の再生産
2 「学校文化」「ジェンダー」「同化」という視点
3 「あいまい」な職務・「周辺」という位置
4 「性暴力」と養護教諭
5 養護教諭のとりうる戦略
書 評
『兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要』(2016年、評者:柏木睦月氏、池田雅則氏)
『週刊読書人』(2014年12月19日号、評者:好井裕明氏)