内 容
かつては害獣対策はもちろん、薬用や祝祭の犠牲にも供されていた猫。なぜ、どのようにして「愛らしいペット」になったのか ——。啓蒙期フランスの科学・文学・美術を通して、「文明」の伴侶としての猫観の誕生に迫り、「ネコ好き」社会をもたらした、人々の感情の大転換を跡づける。
目 次
口 絵
凡 例
序 章 愛の歴史をどう書くか
1 ペットと近代 —— 研究史の整理
2 表象・メディア・感情史 —— 本書のアプローチ
3 猫と啓蒙 —— 本書の仮説
4 4つの感情文化 —— 分析概念の導入
5 全体を見る猫 —— 本書の構成
第Ⅰ部 「野蛮」の発明
第1章 「猫の大虐殺」を読みなおす
—— マルチスピーシーズな歴史のために
はじめに
1 民衆文化の猫
2 「民衆」とは誰か
3 失われた猫を求めて
おわりに
第2章 資源としての猫
—— 飼う、売る、食べる
はじめに
1 猫の飼育
2 猫の販売
3 猫の食用
おわりに
第3章 猫と医療のフランス革命
——〈猫で治す〉から〈猫を治す〉へ
はじめに
1 薬としての猫
2 薬剤師の誕生
3 猫医学の黎明
おわりに
第Ⅱ部 愛好家の目覚め
第4章 貴族社会のセレブ猫
—— ルイ14世期のサロンとメディア
はじめに
1 みやびな時代
2 「デュピュイ嬢の猫」
3 デズリエール夫人とグリゼット
4 レディギエール夫人とメニーヌ
おわりに
第5章 猫の歴史家モンクリフ
—— 書物がつくる感情共同体
はじめに
1 立身出世の宮廷人
2 ジャンルとジェンダーの攪乱
3 啓蒙された感情
4 猫愛好家の共同体
おわりに
第Ⅲ部 表象による馴致
第6章 博物学者の猫論争
—— ビュフォンと啓蒙の問題系
はじめに
1 デカルトの衝撃
2 人家に潜む野獣 —— ビュフォンの猫
3 文明と野蛮の鑑 —— ソンニーニの猫
4 「恩義の支配」—— キュヴィエの家畜理論
おわりに
第7章 長靴を脱いだ猫
—— 寓話詩と妖精譚
はじめに
1 古代の遺産と民間伝承
2 猫の脱魔術化
3 自然界から人間界へ
おわりに
第8章 優雅なふれあい
—— ロココ時代の猫絵画
はじめに
1 視覚から触覚へ —— 猫と女性
2 いじめの終わり —— 猫と子供
3 家族の一員 —— マルグリット・ジェラールの猫
おわりに
第Ⅳ部 感情のかたどり
第9章 愛猫通信
—— 飼い主たちの感情表現
はじめに
1 書簡とその役割
2 たとえひとが嗤うとも —— グラフィニ夫人の手紙
3 道化師の悲しみ —— ガリアーニの手紙
4 思い出のロロ ——『ラ・リヴィエール伯爵夫人の手紙』
おわりに
第10章 大学街の猫裁判
—— 醜聞事件と感情の暴露
はじめに
1 事件のあらまし
2 証人のまなざし
3 趣意書の応酬
4 リベンジ文学
おわりに
終 章 猫の歴史を考える
あとがき
注
参考文献
図版一覧
事項索引
人名・猫名索引