内 容
日本の歴史において、狩猟はつねに権力と結びついていた。なぜ「野生のキャプチャー」がそれほど大きな政治性を帯びたのか。古代から近世まで、天皇・公家や武士たちが実践した鷹狩・巻狩などを通観し、殺生禁断や、暴力と儀礼をつなぐ広範な狩猟文化を探究する中から、列島の人間と動物の関係を問い直す。
目 次
序 章
1 日本中世における狩猟をめぐって
2 隣接諸分野における狩猟の研究
3 本書の方法と視座について
4 本書の構成
第Ⅰ部 狩猟と王権
第1章 王朝における古典的狩猟文化の形成
はじめに
1 古代の王権と狩猟
2 平安王朝の変化と鷹狩の卓越化
3 野行幸から鷹飼渡へ
4 摂関・天皇・院
おわりに
第2章 武家首長の狩猟と殺生禁断
はじめに
1 源頼朝の狩猟と殺生禁断
2 幕府政治の展開と狩猟
3 殺生と新制
4 室町の王権と狩猟
おわりに
第3章 新たな天下と狩猟
はじめに
1 室町殿と信長の狩猟
2 豊臣政権と狩猟
3 徳川の王権と狩猟
おわりに
第Ⅱ部 鷹狩文化の政治性
—— 鷹道・鷹書・鷹の家
第4章 王朝文化としての鷹狩とその禁止
はじめに
1 殺生禁断と鷹狩の禁止
2 鷹狩をめぐる葛藤
3 野鳥の飼養とその禁止
おわりに
第5章 鷹狩と鵜飼の比較史
はじめに
1 共通点
2 相違点
おわりに —— 近代化のなかで
第6章 鷹書の世界
—— 戦国期の書目から
1 鷹書の研究史
2 鷹書のなかの鷹書
第7章 『鷹狩記』と公家の「鷹の家」
—— 鎌倉時代の鷹書とその流布
はじめに
1 基盛の家系と『基盛朝臣鷹狩記』
2 『基盛朝臣鷹狩記』の諸本
3 『《原》鷹狩記』は誰の著作か
おわりに
第8章 持明院基春考
—— 室町・戦国期の鷹道とその家業化
はじめに
1 基春の生涯
2 基春と書物
3 持明院家文書の誓詞群
4 『尊卑分脈』の注記
おわりに —— 選択された家業
第9章 神を称する武士たち
—— 京都諏訪氏と鷹道
はじめに
1 諏訪の神氏をめぐって
2 「神氏系図」と鷹道
おわりに
第Ⅲ部 獣猟と中世社会
—— 武力・生業・儀礼
第10章 出土鉄鏃と武士の職能
はじめに
1 出土した鉄鏃
2 矢の分類と出土鉄鏃の評価
3 武士の狩猟とその目的
4 荒野と猪鹿
5 「堀内」と中世のシシ垣
おわりに
第11章 武家の狩猟と矢開の変化
はじめに
1 『吾妻鏡』の矢口祭
2 矢開の獲物
3 変化の時期
おわりに
【史料翻刻】鹿之矢開之事
第12章 『狩詞記』の史的位置
はじめに ——『後狩詞記』と『狩詞記』
1 『狩詞記』の成立
2 『狩詞記』を読む
3 狩猟文化の階層差
おわりに —— 獲物としての鹿
第13章 村の狩猟とその継承
はじめに
1 狩猟と合戦
2 民俗のなかの村の狩猟
3 村の武器と身体 —— 継承の契機
4 村の相撲 —— 訓育される侍の身体
5 村の弓矢行事
おわりに
第14章 狩猟神事の盛衰
—— 焼き狩りと落とし穴
はじめに
1 狩猟神事とその遺跡
2 焼き狩りと神事
3 狩猟神事の衰退と落とし穴
第15章 狩庭を立てること
はじめに
1 庭を立てる
2 市庭・立庭
3 網 庭
4 狩 庭
おわりに
注
あとがき
初出一覧
図表一覧
索 引
書 評
『歴史評論』(2024年10月号、第894号、評者:永松敦氏)
『史学雑誌』(第133編第3号、2024年3月、評者:高橋典幸氏)
『上智史學』(第68号、2023年11月、評者:苅米一志氏)
『鎌倉遺文研究』(第51号、2023年4月、評者:下村周太郎氏)
『日本歴史』(2023年11月号、第906号、評者:苅米一志氏)