内 容
謎の絵巻とも言われる国宝「鳥獣戯画」。なぜ動物が擬人化されているのか。その流動する画面はどのように連環しているのか ——。中世日本の芸能、王権、美意識にもとづく精緻な分析と、動物と人間のシームレスな関係についての考察により、全四巻を読み解く。マンガ・アニメ起源論も検証。
目 次
はじめに
第1章 「鳥獣戯画」甲巻の復原
第2章 「鳥獣戯画」甲巻研究史の再検討
1 「鳥獣戯画」という謎の本体
2 研究動向の分析
(1)仏教的主題説
(2)年中行事主題説
(3)機能論的観点
3 研究史的反省
第3章 流動するテクストとしての「鳥獣戯画」甲巻
1 連歌との類縁性
2 連歌の式目
3 賦物について
第4章 「鳥獣戯画」の成立と連歌史
1 短連歌
2 鎖連歌
3 長連歌
第5章 有心無心連歌の隆盛と「鳥獣戯画」甲巻
1 有心無心連歌
2 賦物としての遊芸
3 有心無心連歌と雅俗の両義性
4 画風と主題における雅俗の両義性
第6章 「鳥獣戯画」甲巻と王権
1 王権の両義性
2 後鳥羽院の芸能と「鳥獣戯画」甲巻
3 実制作年代と成立の場の検討
第7章 「鳥獣戯画」甲巻の美意識
1 風流の精神
2 平安末期の2つの美意識
3 「鳥獣戯画」甲巻と過差禁制
4 物合の場で培われる美意識
5 物合の場を超えて広がる美意識
第8章 「鳥獣戯画」甲巻の歴史的文脈
1 中心と周縁の観点
2 文化的価値体系の非対称性と院政的価値の台頭
3 連歌テクストとして読み解く試み
第9章 「鳥獣戯画」乙巻の考察
—— 甲巻との関係を中心に
1 研究史
2 甲巻と乙巻の連携
3 乙巻の読解
第10章 「鳥獣戯画」丙巻の考察
1 先行研究の検討
2 丙巻・人物戯画の造形的特色
3 丙巻・動物戯画の造形的特色
4 丙巻と嗚呼絵
5 丙巻・人物戯画と動物戯画の関係
第11章 「鳥獣戯画」丁巻の考察
1 丁巻の場面配列と戯画表現の特徴
2 似絵風官人付加の可能性
3 付加の時期
4 筆線形式の効果
5 文人画的価値観との類縁性
6 似絵と文人画的価値観
第12章 「鳥獣戯画」とマンガ・アニメ
1 絵巻物起源説 ——「鳥獣戯画」を中心に
2 絵巻物起源説批判
3 キャラクター形成の相違
4 ポストモダン的な性質の共通性
5 「鳥獣戯画」の受容とポストモダン
6 超歴史的なつながり
終 章 「鳥獣戯画」4つの巻
—— その相互関係に注目して
補 論 動物と人間のシームレスな関係
—— 思想史的前提について
1 西洋における動物と人間の哲学
2 日本における動物観
3 人文学における位置づけ
註
あとがき
図版一覧
索 引
書 評
中日新聞(2021年9月18日付、夕刊、「ほんの裏ばなし」)
『図書新聞』(2021年4月10日号、第3491号、評者:増記隆介氏)
関連書
『アニメ・エコロジー』 トーマス・ラマール 著/上野俊哉 監訳/大﨑晴美 訳