内 容
西洋中世の人々が生きた豊穣なる世界 ——。動植物や人間から、四大や宇宙、天使や魔女、仲間と他者、さらには楽園と煉獄まで、文学・図像・伝説・夢を彩る広大な想像界を縦横無尽に論じ、その全体構造を解明する。心性史・社会史を刷新する「イマジネールの歴史学」の集大成。
目 次
序 章 想像界の歴史学
1 想像界へのアプローチ
想像界とは何か
文学・図像・伝説・夢
研究史
2 驚異の役割
中世知識人にとっての驚異
分類・定義の試み
キリスト教的驚異について
驚異の歴史
3 本書の概要
第Ⅰ部 植物・動物・人間
1 薬効の在処 —— 植物から人体へ
植物薬
鉱物薬
動物と人体
癒しのイメージ
むすび
2 庭園の変容
飼い慣らされた自然空間
庭と果樹園の現実
愛の庭
魂の救いの庭からマリアの庭へ
王の庭
むすび
3 鸚鵡と梟
鳥たちの世界
鸚鵡
梟
図像が発信するメッセージ
むすび
4 動物観と動物イメージの変遷
ヨーロッパ的動物観の根源
動物イメージ増殖の理由とその操作
動物のヒエラルキー
幻獣の役割
中世の動物園
むすび
5 魂の姿
神学的思弁
擬人化・身体化する魂
死後の魂と幽霊
カタリ派の教説
むすび
第Ⅱ部 四大から宇宙へ
1 地 —— 母なる大地
アダムの身体
沃土 —— 食物と医薬と魔力
死と腐敗のシンボル
山と洞窟の住人
揺れる大地
むすび
2 水 —— 水浴と温泉のイマジネール
入浴慣行の歴史
自然の水の治癒力への信仰
医学的ディスクール
快楽としての水
魂の救済と若返りの水浴
むすび
3 火 —— 神秘と怪異の光
神の光と地獄の業火
雷と稲妻
妖火
儀礼の火
むすび
4 風 —— 翼に乗って
空気と風
風の神話・伝説
風と天使と鳥の翼
翼の象徴
むすび
5 宇宙と世界の形
ゲルマン時代
ロマネスク時代
ゴシック時代以後
王国・ヨーロッパと教会・キリスト教世界
むすび
第Ⅲ部 聖と魔
1 天使の訪れ
聖人と修道士
妖精・鳥としての天使
守護天使
天地を繋ぐ使者
神の軍勢
むすび
2 聖心崇拝
抒情詩からアレゴリー文学へ
心臓の政治的地位の上昇
心臓の別葬
聖心への敬虔心
家・本・地図
むすび
3 魔術師ウェルギリウス
キリストの預言者
ナポリでの魔術
ローマの驚異へ
白魔術師から黒魔術師へ
愛の虜囚
むすび
4 魔女の先駆け
ディアナとヘロディアス
ホルダとホッレ姥
ペルヒタ
ラミアとストリガ
むすび
5 魔女のダンスとサバトの成立
サバトの登場と定着
魔女のダンスの実態
ド・ランクルの場合
各身分におけるダンスの伝統
キリスト教とダンス
むすび
第Ⅳ部 仲間と他者、現世と異界
1 権力と権威のイメージ
教皇
皇帝と国王
貴族と騎士
都市支配者
さかさまの世界
むすび
2 友愛の印
友愛の裏面と儀礼
接吻
指輪(プレゼント)
血盟
誓約
むすび
3 ユダヤ人人相書
宗教文学と美術
宗教劇
3つの嫌疑
追放と迫害の年代記
むすび
4 糸巻き棒論
ギュナエケウムとヴェイエ
糸巻き棒と色欲
糸巻き棒の民俗
図像の中で
むすび
5 「地上の楽園」と「煉獄」
地上の楽園の神学
インドとオリエントの幻想
西方海上の楽園
千年王国とコカーニュの国
煉獄のイメージ
死者をめぐる異教的信仰と悔悛の神学
むすび
終 章 想像界の構造とその変容
A 異教とキリスト教
B 超自然界と聖性・魔性
C 自然・宇宙と身体
D 空間と時間
E 社会の外と内
F 想像界のダイナミズム
あとがき
註
参考文献
図版一覧
索 引
書 評
『西洋史学』(第276号、2023年12月、評者:山中由里子氏)
『史学雑誌』(第131編第1号、2022年1月、評者:草生久嗣氏)
『図書新聞』(2020年5月30日号、第3449号、評者:池上英洋氏)
『週刊読書人』(2020年4月3日号、第3334号、評者:宮下規久朗氏)
著者の既刊書
『原典 イタリア・ルネサンス芸術論』(上下巻) 池上俊一 監修
『西洋中世史研究入門[増補改訂版]』 佐藤彰一・池上俊一・高山 博 編