内 容
中世ヨーロッパは叫び声に満ちていた ——。修道士や「敬虔な女性たち」の内心の叫びから、異界探訪譚が語る罪人の悲鳴、さらには少年十字軍や鞭打ち苦行運動に伴う熱狂まで、キリスト教世界に響き渡る多様な〈声〉に耳を傾け、霊性史・感情史の新生面を切り拓く気鋭の力作。
目 次
はじめに
第1章 救いの叫び、罪の叫び
A 日常的信心業、聖なる世界との繋がりにおける〈叫び〉
1 〈祈り〉と〈叫び〉
(1)修道士 —— 神への〈祈り〉、文字上の〈叫び〉
(2)一般信徒 —— 必死の〈祈り〉と〈叫び〉
2 聖人崇敬、奇跡の実現と〈叫び〉
(1)聖人、聖なるものへの素朴な〈叫び〉—— 聖人崇敬の現場から
(2)神および守護聖人への訴え —— 修道院の典礼的儀式「叫び」
3 異教の「残滓」と〈叫び〉
まとめ
B 悪魔と罪人の〈叫び〉
1 悪魔と悪魔憑きの〈叫び〉
(1)激しい〈叫び〉を症状とする悪魔憑き、狂人、悪魔
(2)真実を叫ぶ悪魔憑き
2 煉獄・地獄の〈叫び〉
(1)異界探訪譚の煉獄・地獄と〈叫び〉
(2)『トゥヌクダルスの幻視』—— 罪深い魂たちの悲痛な〈叫び〉にあふれた地
(3)『聖パトリックの煉獄』—— 罪人の悲痛な〈叫び〉とキリストの名の
〈叫び〉
(4)『エインシャムの修道士の幻視』—— 罪人の〈叫び〉の継続
3 異界からの来訪
(1)エルカン軍団
(2)罪人や悪魔の来訪と〈叫び〉の消滅
まとめ
結 び
補論1 中世の音楽と〈叫び〉
第2章 「敬虔な女性たち」の叫び
——「新たな聖なる〈叫び〉」の展開
A 盛期中世以降の〈霊性〉の展開と「敬虔な女性たち」の台頭
1 霊性史の枠組み
(1)一般信徒を含む霊性史
(2)12世紀後半から13世紀の転換期と新たな宗教生活
2 「敬虔な女性たち」の〈霊性〉とその展開
(1)〈女性的霊性〉とは何か
(2)「敬虔な女性たち」とは誰か
B 新たな〈霊性〉と「聖なる〈叫び〉」の変容
1 救いと聖性の〈叫び〉
(1)神への〈祈り〉と〈叫び〉
(2)聖性の有無への反応の〈叫び〉
2 罪と贖いの〈叫び〉
(1)罪人・罪と〈叫び〉
(2)受難のイエス・キリストと〈叫び〉—— 反応、共感、追体験
3 神から与えられる〈叫び〉
(1)神からの使命として —— コルトーナのマルゲリータ
(2)聖母の慈悲を伝えるものとして —— マージェリー・ケンプ
結 び
補論2 感情の〈叫び〉を追って
第3章 集団的宗教運動と〈叫び〉
A 十字軍運動の中の一般信徒 —— 神の〈叫び〉、神への〈叫び〉
1 十字軍と「神の思し召し」の〈叫び〉
(1)十字軍研究とウルバヌス2世の演説
(2)「戦争の叫び」と十字軍の〈叫び〉
2 少年十字軍と〈叫び〉
(1)少年十字軍とその参加者
(2)フランスの少年十字軍
(3)ドイツの少年十字軍
まとめ
B アレルヤ運動、鞭打ち苦行運動
——〈身体〉の宗教運動と〈叫び〉のゆくえ:13世紀から14世紀
1 アレルヤ運動(1233年)の〈叫び〉
2 鞭打ち苦行運動と〈叫び〉の展開
(1)中世キリスト教世界の鞭打ち業と兄弟会
(2)第一期鞭打ち苦行運動(1260年)
(3)第二期鞭打ち苦行運動(1349年)
3 北イタリアと北ヨーロッパの地域差をめぐって
まとめ
C ジェズアーティ会の運動とビアンキ運動
——〈救い〉への「過程」となる〈叫び〉の展開:14世紀後半
1 ジェズアーティ会の運動
(1)ジェズアーティ会の生い立ち
(2)ジェズアーティ会の信心業と〈叫び〉
2 ビアンキ運動
(1)運動の意図とあらまし
(2)ビアンキの〈霊性〉と〈叫び〉の意味 —— ビアンキのラウダから
まとめ
結 び
補論3 絵画から見る世俗の〈叫び〉
おわりに
あとがき
註
参考文献
索 引
書 評
『西洋史学』(第275号、2023年6月、評者:森田直子氏)
『史学雑誌』(2023年3月号、第132編第3号、評者:大黒俊二氏)
「UTokyo BiblioPlaza」(2022年7月25日公開、自著紹介)
『図書新聞』(2022年3月5日号、第3533号、評者:櫻井康人氏)