内 容
商人・商業への蔑視が肯定へと転換していくトポスの変容を、スコラ学文献・教化史料・商人文書に表れた徴利、為替、公正価格論などをめぐる逆説的な展開からたどり、中世経済思想の隠された水脈を捉え直す。徴利禁止から近代的銀行の源流・モンテ設立へといたる、壮大な商業の精神史。
目 次
はじめに —— 視点・史料・方法
序 章 嘘と貪欲
1 スコラ学文献から
2 教化史料から
3 商人文書から
Ⅰ スコラ学文献から
第1章 徴利禁止の克服をめざして
1 損害賠償と投資貸借
2 徴利禁止の根拠
3 期待利益喪失論の展開
4 Naviganti 註釈史(1)—— 期待利益喪失論
5 Naviganti 註釈史(2)—— 投資貸借論
第2章 石から種子へ
1 オリーヴィ評価の変遷
2 13世紀の「資本論」
3 種子的性格
第3章 公正価格と共通善
1 解読格子としての日本語
2 変化する commune の意味
3 bonum による方向づけ
4 公正価格論の伝統と革新
5 commune 翻訳の東西
第4章 清貧のパラドックス
1 自発的清貧者と商人
2 清貧論争
3 「貧しき使用」の探究
4 「貧しき使用」から商人へ
5 自明ならざる清貧
Ⅱ 教化史料から
第5章 托鉢修道会と新説教
1 説教史料 ——「声の影」
2 筆録説教
3 範例説教
4 説教補助マニュアル
5 二つの世界、二層の言説
第6章 ベルナルディーノ・ダ・シエナと商業・商人観
1 罪深き商業、義しき商業
2 声の説教、文字の説教
3 声の検閲、文字の検閲
4 小さな危険、大きな危険
第7章 ベルナルディーノ・ダ・フェルトレとモンテ・ディ・ピエタ
1 徴利 usura から利子 interest へ
2 モンテ・ディ・ピエタ概観
3 1493年、パヴィア
4 モンテ説教
5 モンテ規約
6 経営の実態
7 モンテ出現の歴史的意味
Ⅲ 商人文書から
第8章 為替と徴利
1 為替は徴利か?
2 商業郵便とユーザンス
3 為替と徴利 —— 現実
4 為替と徴利 —— 解釈
第9章 「必要と有益」から「完全なる商人」へ
1 「必要」と「有益」のゆくえ
2 ジョヴァンニ・ドメニコ・ペリ
3 ベネデット・コトルリ
4 ジャック・サヴァリ
5 「完全なる商人」へ
おわりに —— 近代への展望
あとがき
註
引用文献
事項索引
人名索引
書 評
『週刊東洋経済』(2016年8月13日・20日合併号、評者:水野和夫氏)
【読売新聞・2006年お薦めの3冊】
【毎日新聞書評】
【読売新聞書評】