内 容
大学はいかにして生まれたのか。ヨーロッパ最古のボローニャ大学と医学で栄えたパドヴァ大学を中心に、学生を主体としたイタリア中世大学の特質を明らかにするとともに、学位と学部、都市や教皇庁との関係から地方性と普遍性の問題に迫り、近代への過程を見通す。制度史と社会史を統合した力作。
目 次
はじめに
序 章 中世大学研究と本書の目的
1 中世大学出現の一般的要因
2 中世大学の全般的状況
3 中世大学史研究の基本的パラダイム
4 本書の目的と視点
第Ⅰ部 ボローニャ法科大学の成立と組織構造
第1章 ボローニャ法科大学の起源
1 ローマ時代の法学校の継承説
2 起源問題の輪郭
3 初期法学校の性格 —— ペポとイルネリウス
4 教養諸学の学校と公証人養成学校
5 普遍権力としての皇帝権との関係
6 「ハビタ」の提示する問題
7 ホノリウス教書の意義
第2章 ボローニャ法科大学の成立過程
1 団体組織の形成 —— コンソルティアとソキエタス
2 ローマ法における契約とソキエタス
3 団体組織としてのソキエタスとコレギウム
4 国民団の形成とソキエタスの消滅
5 国民団の目的
6 国民団の規約と性格
7 大学団の成立
8 大学団の目的・機能
9 大学団の意義 —— 教師排除の理由
10 ボローニャのコムーネと大学団の組織的関係
11 学位授与団(collegium)の成立
12 学位授与団と法律家組合との関係
第3章 ボローニャ法科大学の組織的性格
1 団体としての法的性格 —— 裁判権と所有権
2 私的な教授契約の構造
3 大学団の役職者と構造 —— 法人組織としての大学団
4 規約における書物規定の意味
5 教師選出の法的意義 —— 契約の法人団体化
6 教師宣誓の意味と内容 —— 教授契約の法的手続き
7 大学団規約の示す機能
8 学位授与団体としてのコレギウムの性格
9 教授契約の組織化と契約当事者の団体化
10 給与制度の導入と法律家組合
第Ⅱ部 法学学位の普遍性
第4章 教育内容としての法学の普遍性
1 大学団(universitas)と大学(studium generale)の概念
2 普遍性の概念
3 普遍法としての市民法とカノン法 —— 学問化と教育制度化
4 普遍法と局地法
5 法学の講義と教授
6 講義の方法と内容
7 法学の学位試験制度
第5章 教皇庁の大学政策と学位の普遍性
1 教授認可権の出現
2 教皇庁の大学政策 —— 二重政策のアンビバレンス
3 ホノリウス三世の大学政策
4 ホノリウス教書の問題 —— 学位制度の観点から
5 教授免許と学位の普遍性
6 コレギウムの変容と学位の変容
7 学位試験制度における「公」と「私」—— その二段階構造
第Ⅲ部 「医学部」の成立と組織の変容
第6章 医学教育と医学学位の法制的基盤 —— 教育権と開業権
1 中世における医学教育と医学学位
2 皇帝権と教皇権による最初の政策
3 サレルノ「医科大学」の成立と世俗権力
4 モンペリエ医科大学における教皇権
5 医学学位の法制的基盤と権限
第7章 ボローニャ大学における教養諸科の形成
1 教養諸学と法学の関係
2 教養諸科のコレギウムと大学団
3 教養諸科コレギウムから医科・教養諸科コレギウムへ
4 教養諸科と法科の抗争
第8章 パドヴァ大学における教養諸科の形成
1 13世紀初期における教養諸科の組織的状況
2 教養諸学・自然学の知的風土と大学
3 政治的要因と教養諸科コレギウムの形成
4 教養諸科学生の法科大学団への従属
5 教養諸科大学団の成立と独立
6 都市による大学政策
7 教養諸科成立の団体的意義
第9章 パドヴァ大学「医学部」の成立
1 「学部」組織への基本的視座
2 「学部」概念の問題
3 「教養諸科コレギウム」から「医学部」への変容
4 「医学部」の組織と構造
5 「学部」統制権
6 学位授与権の問題
7 医学学位の授与過程
8 医業の開業認可権と統制権 —— 医学部と医師組合
9 教師選出権と講座編成
10 14、5世紀における団体関係の変化
第Ⅳ部 医学の教育制度化と学位の意義
第10章 教養諸学と医学の基本的構造
1 「学部」の成立と医学の成立
2 教養諸学(自由学芸)の伝統と医学
3 自由学芸と手技的学芸
4 「教養諸学部」の教授科目
5 自由学芸のイタリア的変容
6 伝統的医学と革新的医学
第11章 医学の大学制度化
1 「医学部」の講座
2 外科の位置
3 「医学部」のテキスト —— 15世紀の教育内容
4 アヴィケンナ『医学典範』の構成
5 『医学典範』の特徴 —— 学的医学の構造
6 思弁的学問と実際的学問 —— 可逆的論理の両面性
7 学的医学の方法的構造化 —— アルデロッティなどの注釈の意義
8 アリストテレス因果律の影響
9 学問の論理と教育の論理
第12章 医学学位の社会的意義
1 医学学位制度の変容
2 医業専門職化と学位
3 医師組合の成立
4 組織としての医師組合
5 医師組合の目的と機能
6 組合加入の資格と条件
7 加入資格としての学位
8 内科医層の増加
9 フィレンツェ大学と医師組合
10 医師組合と「医学部」の対立 —— 学位授与権の所在
11 学位の意義の変容
第Ⅴ部 パドヴァ大学の地方性と普遍性
第13章 15世紀パドヴァ大学の社会的機能 —— 学位取得者と社会構造
1 中世大学の地方化と学位の地方化
2 ヴェネツィアの社会構造
3 史料処理上の問題
4 パドヴァ大学におけるヴェネツィア人学生の社会的・経済的出自
5 ヴェネツィアの社会・職業構造と学生の修学傾向
6 ヴェネツィアの教育政策とパドヴァ大学の機能
7 学位取得者と都市社会
第14章 パドヴァ大学の国際性
1 中世大学の国際性と地方性
2 ヴェネツィア支配以前の外国人学生
3 シニョリーアによる大学政策
4 ヴェネツィア支配初期における外国人学生
5 ヴェネツィア支配の影響
6 法学を学んだ外国人学生
7 人文主義的教養諸学の影響
8 医学を学んだ外国人学生
9 中世大学の地方化と普遍性
終 章 中世大学の組織と学位 ——その普遍性と地方性
1 法科大学団とコレギウムと学位の変容
2 「医学部」の成立による新しい団体関係と学位の変質
3 医師組合の成立に伴う学位の変容
4 近代初期の大学に向けて
おわりに
註
主要参考文献
人名・地名・書名索引
事項索引