内 容
ヨーロッパがはじめてヨーロッパとなった時代 —— その心的世界の構造を、現実社会とのダイナミックな連関の下、思考・感覚・感情・霊性・想像の五つの側面とその相互作用から解明した全体史の試み。魂と肉体、個人と共同体、声と文字、理性と感情、自然と超自然が、イメージの深い象徴=認識作用によって結びつけられ、宇宙的交響を生み出したロマネスク世界を一望する。
目 次
はじめに
第1章 方法の問題
第2章 プレ=ロマネスク
第3章 思考(1)
—— 芸術的認識
A 建築・彫刻
B 音楽
C 文学
(1)ラテン抒情詩
(2)武勲詩
(3)トルバドゥールの抒情詩
D 美意識
第4章 思考(2)
—— 知的認識
A ロマネスク思想の主要論題
(1)宇宙・自然論
(2)政治・社会論
(3)歴史論
(4)聖体・三位一体論
B 主要概念と方法
C 教育課程
第5章 感 覚
A 触 覚
(1)触れる宗教
(2)神明裁判
(3)文学の証言
B 聴 覚
C 五官の編成と身体・記憶
第6章 感 情
A 恐怖と苦悩
(1)恐 怖
(2)苦 悩
B 憎悪と愛
(1)憎 悪
(2)愛
C 感情世界の組成
第7章 霊 性
A エリートの霊性
B 民衆の霊性
(1)巡礼運動
(2)「神の平和」運動
(3)初期十字軍
(4)異端運動
(5)教会建築運動
C 両者の関係
第8章 想 像
A ロマネスク期を代表するイメージ群
(1)身体と森
(2)猿・狼男・野人
(3)異界
(4)天使と悪霊
(5)女性と黒人
(6)生活空間
(7)夢と幻視
B 想像界の構造
第9章 こころと現実
—— まとめ
A 心的世界の諸局面の相互連関
B エリートと民衆
C 心的世界と社会的現実
(1)自然環境と物質文明
(2)家族・親族関係
(3)社会体制
(4)農民の状況
(5)教 会
(6)都 市
むすび
—— ロマネスクからゴシックへ
あとがき
注
参考文献
図版出典一覧
固有名詞索引
書 評
『みすず』(2022年1・2月合併号、読書アンケート特集、評者:小澤実氏)
『史林』(第83巻第6号、2000年11月、評者:江川温氏)
『學鐙』(第83巻第6号、2000年2月、評者:佐藤彰一氏)
「東京大学 教養学部報」(2000年1月12日号、評者:山上浩嗣氏)
朝日新聞(1999年12月19日付、読書欄特集「今年の3点」、評者:黒田日出男氏)
著者の既刊書
『西洋中世史研究入門[増補改訂版]』 佐藤彰一・池上俊一・高山 博 編
『原典 イタリア・ルネサンス芸術論』(上下巻) 池上俊一 監修