内 容
近代は視覚の時代か —— さまざまに語られる「視覚」と「モダニティ」の関係を、美術史、科学史、思想史、文学史などの諸領域から探究。ルネサンス以降の「観察空間」の形成と19世紀以降の変容という歴史的変化を射程に入れ、均質な近代イメージの限界と経験の多様な可能性を問う。
執筆者
(執筆順、*は編者)
*山中浩司 (序、Ⅲ、Ⅴ)
岡田温司 (Ⅰ)
*大林信治 (Ⅱ)
生越利昭 (Ⅳ)
三谷研爾 (Ⅵ)
奥田隆男 (Ⅶ)
尾崎信一郎(Ⅷ)
目 次
序 目覚めたもののための人工の夢
A 観察の技法
Ⅰ ルネサンスにおける遠近法
—— キュクロプスの眼とアルゴスの眼のあいだで
1 「透かして視る」—— 窃視の装置
2 ブルネッレスキの視覚実験 —— 絵画の「鏡像段階」
3 アルベルティによる理論化 ——「現実の大胆なる抽象」
4 画家たちの実践
5 「象徴形式」としての遠近法 —— 遠近法の相対化
6 再-相対化へ、多元化へ向けて
Ⅱ 近代的視覚の形成
—— 科学革命における観察と実験
1 観察と解釈 —— 若干の予備考察
2 器具と観測 —— 天文学の場合
3 実験と観察 —— 物理学の場合
4 近代的視覚のニュートン的形成
Ⅲ 視覚技術の受容と拒絶
—— 17~19世紀における顕微鏡と科学
1 干 渉
2 顕微鏡と17世紀
3 不信とイマジネーション
4 顕微鏡と医学改革
5 視覚と顕微鏡
Ⅳ 視覚の社会化
——「観察者」視点の生成と変容
1 近代科学と「観察者」視点の生成
2 「自己観察」視点の生成
3 「観察者」視点の社会化
4 自己観察者と絶対的観察者との葛藤
B 視覚と経験
Ⅴ 感覚の序列
—— 17・18世紀における「視覚」「触覚」概念の変容とその地位
1 洞窟とイメージ —— 視覚をめぐる幻影と悟性
2 視覚と触覚 —— モリヌークス問題と経験論
3 触覚と生理学
Ⅵ 街衢へのまなざし
—— 近代における都市経験とその言語表現
1 経験された都市
2 都市空間と視覚技術
3 枠視の形式
4 正しき都市像 —— ニコライの場合
5 遊歩する身体 —— リヒテンベルクの場合
6 ジオラマの愉悦 —— シュティフターの場合
7 都市文学の原郷
Ⅶ 視覚と距離
—— ゲオルク・ジンメルとアロイス・リーグル
1 シンメトリーの問題
2 美術史における形式分析 —— 芸術意欲の問題
3 美的距離 —— 浮遊する眼
4 社会学的距離
5 距離化としての近代 —— 主観主義の問題
6 注意としての眼差し
Ⅷ 視覚性の政治学
—— モダニズム美術の視覚をめぐって
1 視覚性とは何か
2 透視図法とその視覚性
3 光学器械と視覚性
4 モダニズム美術と視覚性
5 モダニズム美術の視覚性への批判
あとがき
索 引