内 容
〈見えないもの〉とたたかう——。大震災/原発事故後、なすべきことを問いかけ、時代のメディア環境の中で自生した、追従せざる映画やアート。「小さき声」の響く作品と向き合い、作家たちの揺れ動く言葉を聴く。新たな困難によっても上書きされない、明日への記憶のために。
目 次
序 章
1 忘却の中から
2 一つ目の「痕跡」
3 二つ目の「痕跡」
4 忘却から約束へ
5 本書の構成
第1章 フクシマ以前のNO NUKES
—— 戦後原子力映画と「安全神話」史
はじめに
1 原子力PR映画にみる「安全神話」——『福島の原子力』
2 危険の区画化 ——『第五福竜丸』
3 可視化される原爆とその意味の形骸化——『太陽を盗んだ男』
4 新たなメディア信奉 ——『原発切抜帖』
おわりに代えて —— ポスト3・11における「安全神話」の解体
第2章 3・11をまたぐ
——『ミツバチの羽音と地球の回転』が示す政治力
はじめに
1 流通スタイルの融合
——「古い」自主上映と「新しい」マルチ・プラットフォーム
2 「アクセントのある映画」の中のグローカルな主体
3 解りやすいスタイル —— ドキュメンタリーにおける「明瞭性」の意義
おわりに
第3章 「原子力ムラ」に抗する
はじめに
1 「映画」と「法」の結びつき
2 「解りやすさ」の美学/文法
3 『日本と原発』の解りやすさ
4 『日本と再生』の解りやすさ
5 短編作品『東電刑事裁判』『不当判決』の解りやすさ
6 テレビ・ドキュメンタリーと「解りやすさ」の評価
おわりに
第4章 インタビューの力
はじめに
1 「東北記録映画三部作」とは何か
2 「東北記録映画三部作」の3つの方法
3 「東北記録映画三部作」と「語り」という証言
おわりに
第5章 動物、女性、子ども、外国人から学ぶフクシマ
はじめに
1 動物から学ぶ ——『福島 生きものの記録』
2 女性から学ぶ ——『小さき声のカノン』
3 子どもと外国人から学ぶ ——『A2-B-C』
おわりに
終 章 3・11以後のアートの力
はじめに
1 ここから世界に発信されるものは何なのだろうか ——『サン・チャイルド』
2 表現者の欲求と先行するハイ・コンセプト——『春夏秋冬』と『五百羅漢図』
3 誰も見ることのできない展覧会 ——「Don’t Follow the Wind」
4 未完であることの力 ——『Fukushima Traces, 2011-2013』と『無主物』
おわりに —— オルタナティブな価値観を求めて
付録 「濱口竜介監督 フィルム・ワークショップ」インタビュー
注
あとがき
初出一覧
図版一覧
索 引
書 評
「ふぇみん婦人民主新聞」(2021年7月5日号、第3291号)
『キネマ旬報』(2021年6月上旬号、第1865号、評者:藤田直哉氏)
『図書新聞』(2021年4月3日号、第3490号、著者インタビュー)