内 容
無の美学から日常の政治性へ ——。小津は保守的で日本的なのか。だとしても、それはどういう意味でか。映画産業との関係を含め、大不況や戦争、復興など、近代性と葛藤する同時代の日本の歴史的文脈の中、それとせめぎ合う作品を精緻に読み解き、新たな小津像を提示した国際的力作。
目 次
凡 例
序 章
小津、歴史、日常
日常を研究する
日常と日本の近代
小津研究における方法 —— テクストと文脈
第1章 初期の小津
—— 小市民映画と日常的リアリズム
松竹の誕生 —— 小山内と野村
蒲田調と日常のリアリズム
日本の中産階級と小津の小市民映画
日常における逸脱
第2章 過渡期における小津
—— サウンドの到来とファミリー・メロドラマ
小津とトーキー
喜八もの —— ノスタルジックな世界への/からの旅
共感における連帯 —— 小津の女性映画
第3章 戦時期の小津
—— ブルジョワ・ドラマと国策映画の間で
軍国主義との妥協 —— 大船と小津の戦時期
ブルジョワ婦人と日常のジェンダー・ポリティクス
不在の父と小津のヒューマニズム的戦争ドラマ
第4章 戦後の小津
—— 占領期の小津映画と復興された東京
戦争、戦後、近代
占領期の小津映画における日常とジェンダー関係
一つの都市の二つの物語 —— 復興された東京と失われた東京
第5章 晩年の小津
—— 新世代と新サラリーマン映画
新世代
新生活
終 章
注
あとがき
参考文献
図表一覧
索 引
書 評
『図書新聞』(2021年1月30日号、第3481号、評者:正清健介氏)
『週刊ポスト』(2021年1月15日・22日号、評者:関川夏央氏)
関連書
『アニメ・エコロジー』 トーマス・ラマール 著/上野俊哉 監訳/大﨑晴美 訳