内 容
日清戦争は東アジア国際関係の画期だった。しかしなぜそう言えるのか。宣戦布告までの過程で清韓宗属関係の解体を導き、下関条約の内容確定と三国干渉を含む履行プロセスで不平等条約体制の動揺と各国の相互関係の変質を促した日本外交の中核的役割を浮き彫りにし、戦争の位置づけを問い直す意欲作。
目 次
凡 例
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序 章
1 本書の課題
2 本書の分析方法
第Ⅰ部 日清開戦前後の清韓宗属関係と日本外交
はじめに
第1章 日清戦争前の東アジアにおける日本外交
1 朝鮮と欧米との条約締結に伴う日本の東アジア政策の変化
2 天津条約締結後の変転
第2章 朝鮮内政改革案による「宗主国」の争点化
1 李鴻章に向けた「第一次絶交書」の宣言
2 総理衙門に向けた「第二次絶交書」の宣言
第3章 2つの争点による2つの軍事的衝突
1 日本の最後通牒とイギリス
2 漢城における朝鮮独立論の浮上と東アジア域内の「条約」の消滅
第4章 大韓帝国の成立による東アジアの変化
1 清韓宗属関係の封印作業
2 高宗の皇帝即位に対する日本の姿勢
おわりに
第Ⅱ部 日清戦争終結に至る日本外交
はじめに
第5章 戦争の継続をめぐるイギリスの動揺
1 イギリスによる講和提議とその失敗
2 アメリカの仲介による日清交渉の開始と列強
3 作戦方針の転換に伴う戦争の継続
第6章 「三国干渉」による「終戦」
1 日本による講和の意思表示
2 下関講和会議の進行と列強間の対立
3 対日勧告へのイギリスの不参加
4 遼東半島の返還を求める四カ国の協調
5 講和条約の批准交換
第7章 遼東半島の返還
1 列強間の共同歩調の瓦解
2 下関条約の履行を目的とした返還条件の提示
3 伊藤が見た李鴻章の政治的立場の変化と日本の方針転換
4 三国干渉の決着による還附報償金の獲得
おわりに
付 論 『蹇蹇録』の描いた国際社会
1 陸奥外交研究と『蹇蹇録』の関係
2 時間と領域をまたぐ『蹇蹇録』
3 陸奥外交としての『蹇蹇録』
4 列強の干渉への対応としての『蹇蹇録』
5 陸奥の主張と陰の主人公李鴻章
第Ⅲ部 下関条約履行をめぐる日本外交
はじめに
第8章 下関条約による新たな不平等条約関係
1 条約の概要と戦後処理における優先事項
2 日清関係の法的変化
3 各国の対清経済活動の変質
第9章 日清通商航海条約締結交渉における経済利害の複雑性
1 貿易拡張と償金受領を優先させた日本の条約案
2 製造品への課税を主張した清とイギリスの同調
3 日本の譲歩と貿易拡張に向けた姿勢
第10章 償金受領に伴う利権獲得競争の先鋭化
1 国内外における償金の位置づけ
2 下関条約履行を妨げる東アジア情勢
3 1898年5月の償金全額受領を目指す日本
第11章 威海衛からの撤退に伴う利権獲得競争への参入
1 伊藤による撤退の表明とイギリス
2 イギリスによる租借条件の変化と日本
3 イギリスへの明け渡しと福建省不割譲要求
おわりに
終 章
註
あとがき
索 引
書 評
『日本歴史』(第836号、2018年1月号、評者:大谷正氏)
『東アジア近代史』(第21号、2017年6月、評者:檜山幸夫氏)
『週刊読書人』(第3181号、2017年3月17日、評者:関智英氏)