内 容
植民地統治の影に隠された内部からの巨大な変化とは? 近世の主要財源にして後の抵抗運動の象徴ともなった塩に注目し、消費や環境、金融も視野に、勃興するベンガル地域市場と現地商人が生み出すダイナミズムを示して、近代への転換を摑みだす。インド史を書き換える瞠目の成果。
目 次
凡 例
序 章 市場・商人・植民地統治
1 本書の目的と分析視角
2 先行研究の成果と課題
3 本書の構成
4 主要一次史料
補論1 イギリスのインド統治と塩 —— 塩の政治化が抱える諸問題
第Ⅰ部 東インド会社の塩専売制度と市場
第1章 インド財政と東部インドにおける塩専売
はじめに
1 EIC 統治期のインド財政
2 塩専売制度の変遷 —— 1772~1863年
3 塩専売制度の基本構造 —— 高塩価政策期を中心に
4 専売制度のなかの外国塩
おわりに
補論2 ベンガル製塩法
第2章 東部インド塩市場の再編
はじめに
1 地域市場圏の形成
2 環ベンガル湾塩交易ネットワークの形成
3 禁制塩市場の形成
おわりに
第3章 専売制度の動揺
—— 高塩価政策の行詰まりと禁制塩市場の拡大(1820年代後半~1836年)
はじめに
1 供給量統制策の破綻
2 輸入圧力の高まりと市場の変化
3 ベンガル製塩業の高コスト化
おわりに
第4章 専売制度の終焉
—— 燃料危機、嗜好、そしてリヴァプール塩流入(1840年代~1850年代)
はじめに
1 燃料市場の形成とベンガル製塩業の縮小
2 東部インド塩市場におけるリヴァプール塩
おわりに
第Ⅱ部 ベンガル商家の世界
第5章 塩長者の誕生から「塩バブル」へ
—— 1780年代~1800年代
はじめに
1 競売の導入と新興商人層の台頭
2 塩長者からカルカッタ・エリートへ
3 投機的買付け人の登場
おわりに
第6章 「塩バブル」の崩壊とカルカッタ金融危機
—— 1810~30年代前半
はじめに
1 塩価格の変動と投機
2 ラム・モッリクの介入と1810年代~20年代半ばの塩投機
3 不正塩切手問題と1820年代後半のカルカッタ金融危機
4 スキャンダル、その後 —— 1830年代前半の投機家
おわりに
第7章 変化は地方市場から
—— 地方商人の台頭
はじめに
1 地方市場における商人層の盛衰
2 フゥグリ河畔からカルカッタへ —— 西部グループの商人
3 シュンドルボンを抜けて —— 中部グループの商人
4 ナラヨンゴンジを拠点に —— 東部グループの商人
おわりに
第8章 市場の機能と商人、国家
はじめに
1 国家の市場への介入 —— その効果と限界
2 市場システムの機能
おわりに
第9章 塩商家の経営
—— 経営史的アプローチの試み
はじめに
1 商家経営の特徴とその管理
2 商家経営と仲介者 —— 市場の分断を超えて
3 商人の組織 —— 家族・カーストを超えて
4 「家」の名誉と「商家」の信用、そして商業からの撤退
おわりに
終 章 塩市場の変容からみる移行期の東部インド
1 本書のまとめ
2 インド史における「1830年」—— 近世から近代へ
注
あとがき
初出一覧
関連地図
図表一覧
人名索引
事項索引
受 賞
書 評
『社会経済史学』(第88巻第4号、2023年2月、評者:村上衛氏)
『週刊読書人』(第3220号、2017年12月22日付、特集「2017年回顧総特集」、評者:関智英氏)
『図書新聞』(第3315号、2017年8月12日付、評者:今田秀作氏)
関連書
『アジア経済史研究入門』 水島 司・加藤 博・久保 亨・島田竜登 編
『接続された歴史』 S・スブラフマニヤム 著/三田昌彦・太田信宏 訳