内 容
インド経済の歴史的な成長を準備したものは、経済自由化でもIT産業でもない。植民地期の胎動から輸入代替工業化、緑の革命の再評価も視野に、今日の躍動の真の原動力を摑み出す。圧倒的な厚みをもつ下層・インフォーマル部門からの成長プロセスの全貌を捉え、その見方を一新する決定版。
目 次
巻頭地図
序 章 現代インドの経済成長の淵源を求めて
第Ⅰ部 経済発展への胎動
—— 第一次大戦後の輸入代替工業化と農村・農業社会の変容
第1章 世界農業不況下の植民地インド
—— 農業生産と農村社会の変化
1 環境変動、農産物価格の下落と農業生産の停滞
2 農村社会構造の変動と下層階層自立への胎動
第2章 植民地下での製造業部門の発展
—— 民族運動、輸入代替工業化と多層的労働市場
1 インド民族運動と選択的保護関税の開始
2 輸入代替工業化の部分的開始
3 多層的労働市場の端緒的形成
第3章 インフォーマル産業発展の原型
—— 在来・小零細企業の展開と消費構造の変動
1 手織業の残存・発展と消費パターンの変化
2 小規模経営の発展と下層民消費の変動
第Ⅱ部 独立インドの経済発展
—— 基盤の形成
第4章 国家主導の輸入代替工業化
—— 工業化の基礎の形成
1 ネルー体制下の重工業化
2 工業発展の減速 ——「高コスト経済」化と新産業の育成
3 おわりに
第5章 独立インドの農業発展
1 農業生産の発展
2 「緑の革命」
3 コモンズと環境への影響
4 土地改革と土地所有の変動
第6章 農村社会構造の変容と農村市場の拡大
1 自立する下層民 —— 南インドの事例から
2 他地域の事例と全国的動向
3 非農業就業の拡大と農業労働者賃金の上昇
4 農村市場の発展へ
5 おわりに
第Ⅲ部 経済発展加速の構造
—— 二層的発展とその交錯
第7章 小・零細工業の発展と低価格品生産
1 小・零細工業の発展
2 「歪んだ発展」か?
3 小・零細工業の拡大と農村・貧困層市場
4 安価な「疑似ブランド品」消費の構造
5 小・零細企業による安価品生産のシステム
6 グローバリゼーションと小・零細工業
7 農村・地域社会を基盤とした「下から」の産業発展
第8章 サービス部門の拡大と農村社会経済変動
1 サービス産業の発展 —— 伝統的部門の重要性
2 大都市のサービス産業 —— インフォーマル部門の重要性
3 都市インフォーマル・サービス業の拡大と都市下層民
4 農村の社会経済変容とサービス産業
5 経済改革下の近代的サービス部門の発展
6 おわりに
第9章 農村-都市インフォーマル部門経済生活圏
1 都市インフォーマル階層の形成と拡大
2 都市インフォーマル階層と農村社会
3 都市インフォーマル部門と農村社会との物的循環
4 農村-都市インフォーマル部門経済生活圏の形成
5 都市インフォーマル部門上層階層の台頭 —— 都市中間層の拡大
6 消費市場としての農村-都市インフォーマル部門経済生活圏
7 都市インフォーマル部門内の対流と上昇の限界
第10章 経済改革と工業・サービス産業の発展
—— 大企業部門を中心に
1 大衆的市場と中間層市場の形成
2 新資本家グループの形成と経済改革
3 工業製品とサービスの国内市場への浸透
4 技術開発・訓練システムと技術集約型産業の発展
5 輸出の新たな展開
第11章 インド社会の階層的構造は変化したのか
—— 都市と農村社会の現在
1 農村から都市へ —— 農村階層と都市の階層との対応性
2 階層間の流動性・断絶性と教育
3 二層の構造 —— 都市中間層社会と農村-都市インフォーマル部門経済生活圏
終 章 21世紀インド経済の制約と可能性
—— 二層的社会経済構造の形成と展望
1 二層構造の歴史的形成
2 社会経済構造の階層性と経済発展 —— 二層の発展の交錯
3 経済発展の制約要因としての階層的構造
4 展 望
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『アジア経済』(第56巻第3号、2015年9月、評者:内川秀二氏)
『社会経済史学』(第81巻第2号、2015年8月、評者:野村親義氏)
『歴史と経済』(第227号、2015年4月、評者:杉本大三氏)
『週刊ダイヤモンド』(2014年12月27日・2015年1月3日新年合併特大号、評者:須藤功氏)