内 容
食卓のユートピアへ ——。大革命後のフランス美食文化の飛躍をもたらした〈食べ手〉による美食批評は、レストランガイドの起源となる一方、それにとどまらない深遠な美食観を宿していた。『美食家年鑑』の著者グリモを通して、〈よく食べる〉とはどのようなことかを探究した美味しい力作。
目 次
凡 例
はじめに
序 章 悪徳から美徳へ
——「グルマン」概念の変遷
1 洗練された「グルマンディーズ」は罪か
2 「フリアン」概念の盛衰
3 グリモにおける「美食家(グルマン)」について考えるということ
第Ⅰ部 深遠なる美食の世界
—— 文人グリモ
第1章 年鑑の伝統と美食批評の誕生
1 〈年鑑〉というジャンル
2 グリモは美食批評の〈発明者〉か —— 18世紀の食の年鑑
3 「食審委員会」という制度
第2章 食べる技芸、料理技芸
1 グリモと『百科全書』の « art » 概念
2 料理人、芸術家、天才
3 食べる技芸
第3章 〈おいしそうな〉ディスクール
—— 文章で食欲をかきたてる手法
1 食欲喚起のレトリックと味覚的描写の欠如
2 食材をめぐる〈旅〉
第4章 美食のエロティシズム
1 食べ物と女性の照応関係
2 背徳的美食あるいは〈黒の様式〉
第Ⅱ部 近代デモクラシー社会と美食文化
—— 観察者グリモ
第1章 グリモと19世紀フランスの食文化史
1 従来の食文化史研究におけるグリモ
2 〈輝かしい〉19世紀初頭のパリの食風景
第2章 食べる身体(1)
—— レストランと大食
1 レストランは革命とともに誕生したか
2 レストランの増殖と近代人の〈競争心〉
3 大食、あるいはブルジョワの太鼓腹
第3章 食べる身体(2)
—— 作法と消費
1 食卓作法の再重視 ——『招待主の手引書』出版の意味
2 作法を消費する
第Ⅲ部 食卓のユートピア
—— 思想家グリモ
第1章 グリモにおける「美食家」概念
1 味覚に対する真摯さ
2 招待に関する厳格な諸規則
3 「美食の帝国」—— 美食家たちの自律的世界
第2章 フランス革命前後の政治・社会とグリモ
1 フランス革命以前のグリモの政治的態度
2 フランス革命下のグリモの政治的態度
3 失われた文人仲間との交流
第3章 心地よい交流のメカニズム
1 理想化された社交 —— 18世紀憧憬の傾向とグリモ
2 「哲学的・文芸的・半滋養的昼食会」
3 サロン、思想協会、革命クラブ
4 儀式と連帯感 —— 1783年2月1日の「有名な夜食会」
第4章 食卓を越えて
—— 美食と社交の思想
1 かつての社交の復活を目指して
2 美食の民主主義
3 口実としての美食から、目的としての美食へ
第Ⅳ部 グリモ以降の美食文学とブリヤ=サヴァラン
第1章 流行する美食文学
第2章 ブリヤ=サヴァランの「国民的」美食
1 イデオローグとブリヤ=サヴァラン
2 食の快楽の正当化
3 肉体と精神
4 会食者の厳選 —— « goût » という基準
5 ブリヤ=サヴァランとグリモ
あとがき
注
参考文献
『美食家年鑑』内容一覧
略年譜
図表一覧
索 引
受 賞
2019年「アントニー・ロウレイ賞」(フランス語版での受賞)