内 容
人びとは何をどのように食べて、空腹を満たしてきたのか。一膳飯屋、残飯屋、共同炊事など、都市の雑踏や工場の喧騒のなかで始まった外食の営みを、日々生きるための〈食〉の視点から活写、農村にもおよぶ広範な社会と経済の変化をとらえ、日本近代史を書き換える。
【自著紹介】湯澤規子“『胃袋の近代 —— 食と人びとの日常史』の刊行によせて”
目 次
序 章 食と人びと
—— 見えない歴史の構築
1 食と人びとの日常史
2 近代の都市と人口と胃袋 —— 見取り図
3 外で飯食う事 —— 知らぬ火の食事
4 社会問題は胃の問題 —— 罪と胃袋
第1章 一膳飯屋と都市
—— 胃袋からみる近代日本の都市問題
1 十銭玉一つの飯どんぶり
2 舌で書く食堂経済学 —— 石角春之助
3 「天下の台所」の近代台所事情 —— 大阪市の一膳飯屋調査
第2章 食堂にみる人びとの関わり
—— 食をめぐる政治と実践
1 都市労働者問題と民営食堂
2 胃袋に対する行政の関与
3 市営食堂その後
4 「地域」社会事業と実務家のネットワーク
第3章 共同炊事と集団食のはじまり
—— 工場の誕生と衣食住の再編
1 工場食の世界
2 共同炊事のはじまり
3 食と「地域」社会事業
4 共同炊事による胃袋の連帯
5 胃袋と企業・国家・科学
第4章 胃袋の増大と食の産業化
—— 大量生産・大量加工時代の到来
1 食の産業化 —— 大量生産と大量加工
2 漬物と近代
3 工場・女工・漬物・肥料
4 蔬菜栽培の発展と漬物屋の増加
5 軍需と家庭 —— 戦下の漬物樽
第5章 土と食卓のあいだ
—— 食料生産の構造転換と農民・農家・農村
1 農村と都市のあいだ
2 農村の変化と青年たち
3 米と繭と新しい商品作物
4 土と食卓のあいだ ——「百姓」から「農家」へ
第6章 台所が担う救済と経済
—— 公設市場・中央卸売市場の整備
1 食の交換と分配
2 胃袋と都市の台所
3 中央卸売市場の誕生 —— 救済政策から経済政策へ
第7章 人びとと社会をつなぐ勝手口
—— 市場経済が生んだ飽食と欠乏
1 勝手口からみる歴史
2 『残食物需給ニ関スル調査』
3 食べものの洪水と空っぽの胃袋
4 食堂の勝手口から地域社会へ
終 章 胃袋からみた日本近代
—— 食と人びとをつなぐ地域の可能性
1 胃袋の孤立化と集団化
2 食と人びとと地域の日常史
3 人びとをめぐって —— 民衆と他者
4 胃袋の現代へ —— 日々食べるということ
注
あとがき
参考文献
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『大原社会問題研究所雑誌』(第735号、2020年1月、評者:原山浩介氏)
『経営史学』(第54巻第3号、2019年12月、評者:加藤健太氏)
『歴史と経済』(第245号、2019年10月、評者:藤原辰史氏)
『歴史評論』(2019年9月号、第833号、評者:玉真之介氏)
『地理学評論』(第92巻第5号、2019年9月、評者:金坂清則氏)
『地理空間』(第12巻第1号、2019年、評者:坂本優紀氏)
『村落社会研究ジャーナル』(50号、2019年6月、評者:安岡健一氏)
『民衆史研究』(第97号、2019年5月、評者:岩崎正弥氏)
『女性労働研究』(第63号、2019年3月、評者:矢島聖子氏)
「日刊ゲンダイ」(2019年4月4日付、HOT Interview)
『農業と経済』(2019年3月号、第85巻第2号、評者:野間万里子氏)
『歴史地理学』(第60巻第4号、2018年11月、評者:三木理史氏)
西日本新聞(2018年12月22日付、読書欄特集「2018 今年の3冊」、評者:高野和良氏)
『地理』(2018年12月号、第63巻第12号、評者:荒又美陽氏)
毎日新聞(2018年12月16日付、読書欄特集「2018 この3冊」、評者:松原隆一郎氏)
『週刊読書人』(2018年9月7日号、第3255号、評者:江原絢子氏)
河北新報ほか4紙(2018年8月19日付ほか、評者:阿古真理氏)
北國新聞ほか14紙(2018年8月4日付ほか、評者:阿古真理氏)
『週刊エコノミスト』(2018年8月14・21日合併号、特集「名編集者が選ぶ 目利きの本棚」、評者:増山修氏)