内 容
中華文人の生活芸術か、想像された国民芸術か ——。第二次世界大戦前、中英の協力により一大展覧会が開かれた。様々な出版や外交を伴い東西文化交流の転換点となったイベントを軸に、日本の影響深いウェイリーらの研究から、在英中国知識人の活動、パール・バックの後押しした林語堂の傑作まで、中国芸術とは何かを問いかける。
目 次
凡 例
序 章 「中国芸術」というユートピア
はじめに
1 本書の独自性と構成
2 ロンドン国際展の開催をめぐる政治的・文化的背景とその意義
第Ⅰ部 ロンドン国際展と「中国芸術」
第1章 ロンドン国際展と「中国芸術」へのアプローチ
1 ロンドン国際展の開催と英国の芸術界・東洋学界
2 中国書画の展示・鑑賞に現れた中英文化の衝突
3 ロンドン国際展と英国人の東洋理解
—— 東洋の装飾品から芸術としての中国書画へ
4 欧米人から見た中国の書
5 東西芸術における技法と芸術理念の相違
6 19世紀以降の西洋芸術の文脈における中国書画の受容
結 び
第2章 二人の英国人東洋学者
—— ローレンス・ビニヨンとアーサー・ウェイリー
はじめに
1 ロンドン国際展におけるビニヨンの活躍と中国芸術論
2 ウェイリーの中国古典の翻訳と研究
—— ロンドン国際展への寄与を中心に
3 ビニヨンの文筆活動に対する同時代評
4 ウェイリーの文筆活動に対する同時代および後世からの評価
結 び
第3章 「西洋の眼」と「日本の眼」
—— ビニヨンの中国絵画理解と日本
はじめに
1 ビニヨンの中国絵画理解と日本人鑑定家・画家
—— 初期の中国絵画学習
2 ビニヨンと「古渡」—— 日本所蔵の中国絵画からの知見と美意識
3 ビニヨンと岡倉天心 ——『極東の絵画』と『東洋の理想』『茶の本』
4 ビニヨンと瀧精一
—— 郭熙の『林泉高致集』の「山水訓」の英訳と解釈を
めぐって
5 極東へ
結 び
まとめ 英国知識人の中国文化理解とその盲点
第Ⅱ部 ロンドン国際展と近代中国知識人
第4章 ロンドン国際展と中国人外交官
—— 郭泰祺と鄭天錫
はじめに
1 初代駐英大使・郭泰祺とロンドン国際展
2 鄭天錫とロンドン国際展
結 び
第5章 ロンドン国際展と英国の中国文化人
—— 劇作家・熊式一と書画家・蔣彝
はじめに
1 劇作家・熊式一と英国
2 書画家・蔣彝のロンドン国際展での活躍
—— 書画展示と著作活動
結び ロンドン国際展の開催と中国人外交官・文化人の果たした役割
第6章 ロンドン国際展と中国の知識界
—— 孫科・蔡元培と『中国評論週報』グループ
はじめに
1 『中国評論週報』『天下』とロンドン国際展
2 温源寧の編集・執筆・評論活動
3 法学者・呉經熊の英訳・評論活動
4 姚克と中国古典劇曲の翻訳・紹介
5 ロンドン国際展と明清の文人文化を紹介する書籍の出版ブーム
まとめ ロンドンからニューヨークへ
—— 林語堂とバック夫妻との出会い
第Ⅲ部 林語堂の「中国」とパール・バック夫妻
第7章 渡米前の林語堂とバック夫妻
——『中国評論週報』と『吾国と吾民』
はじめに
1 『中国評論週報』を中心とした英文執筆活動の実態と特徴
2 中国文明論の諸側面
—— ベルリン国際展とロンドン国際展の開催を受けて
3 『中国評論週報』での執筆活動を通したバックとの交流
4 エッセイから英文著書へ
—— 林とバックの大家族制度論と女性論を読む
5 『吾国と吾民』の出版と英語圏の読書界・学術界からの評価
結び アメリカへ
第8章 渡米後の林語堂とバック夫妻
——『アジア』、ジョン・ディ社、「東西協会」
はじめに
1 バック夫妻とロンドン国際展
2 バック夫妻と『アジア』
3 林語堂と『アジア』、ジョン・ディ社、「今月の推薦図書クラブ」
4 林語堂と「東西協会」
5 林語堂と「東西協会」をめぐる人々
結び 中国の伝統的な文人文化の精髄の紹介へ
第9章 林語堂における性霊・ユーモア・閑適
——『生活の芸術』を中心に
はじめに
1 『生活の芸術』とはどのような書物なのか
2 国民気質としてのユーモアから抵抗精神としてのユーモアへ
3 抵抗精神としてのユーモアから「生活の芸術」としてのユーモアへ
4 英語圏の文芸界・読書界における『生活の芸術』の受容
結び ユートピアとしての中国像
終 章 「失われた楽園」を超えて
——『北京好日』に描かれた文人文化と現代中国
はじめに
1 『北京好日』と『紅楼夢』
2 曾家の方へ —— 儒教的で伝統的な志向性
3 姚家の方へ —— 道家的で融合的な志向性
4 英語圏の文芸界での評価
結び 文人文化の越境と林語堂の「中国」
あとがき
注
附 録
主要参考文献
図版典拠一覧
索 引
書 評
『比較文學研究』(106号、2020年12月、評者:西槇偉氏)
『中国21』(第51巻、2019年12月、評者:藤原貞朗氏)
『中国研究月報』(2020年3月号、第74巻第3号、評者:中村みどり氏)