内 容
グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだす。
目 次
序 章 移り棲む美術
第Ⅰ部 ジャポニスムの群生
第1章 19世紀後半のフランスにおける日本趣味
1 幕末の日仏関係
2 美術工芸品の移動
3 1867年のパリ万国博覧会をめぐって
4 1870年代以降のジャポニスムの広がりと深化
5 エルネスト・シェノー「パリの日本」とジャポニスム
第2章 サロン絵画における主題としての日本
—— 異国趣味と女性像
1 サロンにおける日本主題の流行
2 ジャポニスム絵画の主要作例
3 美術史から文化史への射程
第3章 フィルマン=ジラールとジャポニスム
1 画家としての経歴
2 《日傘をさす日本の女》と《小川の辺の日本の女たち》
3 《日本の化粧》—— 発見された品物と発想源
4 1873年のサロンにおける批評
5 フィルマン=ジラールのジャポニスム、あるいは風俗主題の変奏
第4章 変容する〈アジア〉
—— 大陸寓意像と「日本娘」
1 寓意図像としての「アジア」
2 中国、そして日本へ
3 「ムスメ」の席巻
第5章 「マネ・印象派のジャポニスム」再考
—— 浮世絵版画との関係を中心に
1 影響・受容論から選択・摂取論へ
2 初期のジャポニザン
3 マネとジャポニスム
4 マネの海景画と広重の《六十余州名所図絵》
5 印象派とジャポニスム
6 ドガと浮世絵版画
7 モネと日本趣味
第6章 絵の中の文字
—— 近代フランス絵画の場合
1 画中に表された文字
2 造形的要素としての署名
3 ジャポニスム —— イメージと文字の融合
4 ファン・ゴッホと広重 —— 絵と文字を写すこと
5 作品タイトルなどその他の文字
第7章 フランスにおける陶磁器のジャポニスム
1 装飾美術とジャポニスム
2 ブラックモンと陶芸
3 装飾的陶磁器から簡素な茶陶へ
4 陶磁器と絵画・彫刻
第Ⅱ部 蘇るラファエル・コラン
第8章 ラファエル・コラン
——「ダフニスとクロエ」の画家
1 自己形成
2 裸婦と外光
3 壁画と肖像画
4 人物画から象徴主義へ
5 絵皿と挿絵
6 晩年のコラン
第9章 コランと日本
—— 共鳴のジャポニスムから日本近代洋画の父へ
1 極東美術コレクション
2 共鳴のジャポニスム
3 日本近代洋画の父
第Ⅲ部 日本近代洋画の開花
第10章 西洋留学と明治洋画
1 明治期に留学した洋画家たち
2 留学期の西洋絵画受容
3 ジャポニスムと洋画家たち
第11章 山本芳翠の裸婦像
——《天女》と《裸婦》について
1 《天女》—— 模写から翻案へ
2 《裸婦》—— ヌードの変質について
3 近代洋画における裸婦の系譜
第12章 山本芳翠の肖像画
——《鮫島尚信像》の数奇な運命
1 鮫島尚信と山本芳翠
2 作品制作とその行方
3 肖像画としての特質
第13章 明治洋画とレアリスムの系譜
—— 五姓田義松のフランス留学
1 フランス留学以前の五姓田義松
2 義松とレオン・ボナ
3 滞仏期の作品について
4 帰国後の義松
第14章 黒田清輝と西洋美術教育
1 留学時代の黒田清輝と美術教育
2 帰国後の黒田清輝と美術教育
第15章 黒田清輝とフランス絵画
1 コランとアカデミスム
2 ミレーと田園生活
3 バスティアン=ルパージュと自然主義
4 ピュヴィス・ド・シャヴァンヌと壁画様式
5 印象派
6 先駆者としての黒田清輝
第16章 ラファエル・コランと日本人画家たち
1 帰国後の黒田清輝とコラン
2 黒田の弟子たちとコラン
3 往還の軌跡 —— 媒介者としてのコランとピュヴィス
終 章 芸術の移動と変容
あとがき
初出一覧
註
図表一覧
索 引
受 賞
書評等
「UTokyo BiblioPlaza」(2021年12月20日公開、自著紹介)
『教養学部報』(第631号、2021年11月、評者:永井久美子氏)
『UP』(2021年8月号、第50巻第8号、評者:佐藤康宏氏)
『月刊アートコレクターズ』(2021年7月号、第148号、著者インタビュー)
『週刊読書人』(2021年5月28日号、第3391号、評者:古田亮氏)
『図書新聞』(2021年5月29日号、第3497号、評者:南明日香氏)