書籍紹介

芸術

藤田嗣治 作品をひらく

旅・手仕事・日本
林 洋子 著

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価格 税込5,720円/本体5,200円
判型 A5判・上製
ページ数 598頁
発行年月日 2008
在庫状況 在庫有り
ISBNコード 978-4-8158-0588-3
Cコード C3071


内 容

越境する創造者 ——。パリ、ニューヨーク、サンパウロ、北京 …… 異文化を放浪して藤田が追い求めたものは何か。絵画にとどまらず、写真、映像、装丁、衣装にいたるまで、豊穣な創作活動を徹底検証。これまでの評伝を超え、多数の図版掲載を実現して作品から画家に迫った意欲作。


目 次

序 章
    1 本書の視点、構成、方針
    2 藤田研究という難問

  第Ⅰ部 見出されたパリ —— 1910年代

第1章 パリ美術界と出会う
     —— キュビスムからプリミティヴィスムへ
    1 パリ定住初期 —— 妻とみ宛の手紙という情報源
    2 パリ到着と前衛美術との出会い —— 1913年後半~14年前半
    3 第一次大戦下のパリ生活 —— 1914年後半~15年前半
    4 「先史美術の都」ドルドーニュでの生活 —— 1915年後半
    5 ロンドン生活と妻との離別 —— 1916年

    コラム① 岩村透『巴里の美術学生』という伏線
    コラム② 旅の始まり —— 朝鮮半島との関わり

第2章 パリ風景を描く
    1 最初のパリ風景画 —— 1914年
    2 1917年という転機
    3 藤田が「パリ風景」で表現したもの
    4 1910年代末のパリ風景と近代都市としての発展
    5 パリ周縁への視線 —— 先駆者としてのルソーとアジェ
    6 日本の後続世代による継承 —— 佐伯祐三、岡鹿之助、松本竣介

    コラム③ 1918年、南仏への旅 —— モディリアーニとの友情

第3章 初めてのブックワーク
    1 詩集 Quelques poèmes の成り立ち
    2 Quelques poèmes のイメージとテキストの分析
    3 Quelques poèmes の持つ意味
    4 1910年代末の絵画との関係 —— 藤田と日本美術の「はじまり」

    コラム④ 信仰を描く
    コラム⑤ 子どもを描く

  第Ⅱ部 乳白色の裸婦と手仕事 —— 1920年代初頭

第4章 新しい裸婦像の確立 —— 同時代性とノスタルジーと
    1 美術史家・矢代幸雄による藤田作品評
    2 1920年代前半の藤田の裸婦作例
    3 裸婦表現の意味と技法との関連
    4 「ジュイ布」とはなにか
    5 「ジュイ布」を描く意味

    コラム⑥ 刺青と触感の絵画
    コラム⑦ 裁縫好きなオトコ

第5章 「乳白色の下地」の下地
    1 カンヴァスを手作りするというアイデンティティー
    2 下地層の物質的組成
    3 下地の白を生かす絵具層
    4 均一ではないニス層
    5 支持体のサイズ
    6 下地が可能にした「線描」—— 黒い輪郭線の画材

    コラム⑧ 動物を描く

第6章 二枚の《私の部屋》—— フランスの職人仕事への傾倒
    1 描かれた「もの」たち
    2 職人仕事の愛好と再生
    3 日本との関係再開
    4 二枚の《私の部屋》に込められた意味

    コラム⑨ アトリエのなかのアトリエ

第7章 ベルギーでの名声 —— パリの新進画家か、日本の画家か
    1 画廊による紹介 ——《自画像》(1921)
    2 コレクターの広まり
       ——《エレーヌ・フランクの肖像》(1924)と《アントワープ港の眺め》
         (1923)
    3 日本との関わり ——《裸婦》(1927)

    コラム⑩ 美術市場と藤田

   第Ⅲ部 パリの日本人美術家 —— 1920年代後半

第8章 パリで日本イメージを求められる
     ——『日本昔噺』(1923)をめぐって
    1 藤田をめぐる「テキストとイメージ」
    2 日本の昔話 —— テキストの源泉
    3 イメージ源としての『前賢故実』—— 転用と独自性
    4 藤田の画業における位置

    コラム⑪ 駐日フランス大使ポール・クローデルと藤田

第9章 パリの「現代日本美術」展と藤田
    1 国民美術協会展における日本美術展(1922年)
    2 サロン・ドートンヌ・日本部門(1923年)
    3 日本美術展 —— 現代の古典派(1929年)

    コラム⑫ 画家としての表象 ——「自画像」と「肖像写真」

第10章 増加するパリの日本人美術家のなかで
    1 第二次大戦以前のパリ滞在
    2 在仏日本人美術家の連帯の始まり
    3 1929年 —— 在仏日本人美術家の分裂
    4 パリの日本人美術家の特性と藤田の位置

    コラム⑬ 仮装、女装 —— 性の曖昧さへの志向
    コラム⑭ 舞台衣装への情熱

第11章 パリでの壁画制作と日本の表象
    1 パリ国際大学都市・日本館の壁画制作 —— 1927~29年
    2 1929年5月 —— 日本館に掲げられた二点
    3 日本館壁画完成前後 —— 1929年前半、パリにて
    4 母国への一時帰国 —— 1929年9月~30年1月
    5 2000年 —— 日本館とメゾン・アトリエ・フジタの接点
    6 1928年の藤田 —— 裸体群像表現に向かって

    コラム⑮ メディア時代の美術家の先駆者として

  第Ⅳ部 旅する画家 —— 1930年代~50年

第12章 多文化との出会いと壁画制作の実践 —— 中南米逍遥
    1 1930年 —— 初めてのアメリカ滞在
    2 非西欧人を描く旅 —— 中南米滞在期(1931年末~33年末)
    3 日本への帰還 —— 母国での中南米表象
    4 壁画への傾倒 —— 大画面の群像表現から公共性へ

    コラム⑯ 旅を記録する(1) エッセイ

第13章 壁画から戦争画へ —— 戦時下のアジア圏への「旅」の行方
    1 「現代日本」を表象する —— 壁画と映画という「大画面」群像表現
    2 中国大陸・東南アジアへの旅 —— 日本軍優勢を描く

    コラム⑰ 東京・パリ・沖縄 —— 藤田と岡本太郎をつなぐ線

第14章 「玉砕図」というフィクションへ
    1 日米開戦からの始まり ——「作戦記録画」から芸術的な「戦争画」へ
    2 茶褐色の「玉砕図」への陶酔
    3 「玉砕図」の熱狂のあとで

    コラム⑱ 「作戦記録画」のサイズと複数性

第15章 アメリカン・コネクション ——フランス再定住まで
    1 アメリカでの存在感の希薄さ —— 先行研究とコレクション
    2 展覧会と出版 —— 1930年~50年
    3 パリの「アメリカニスム」と「パリのアメリカ人」
    4 アメリカでの「エコール・ド・パリ」受容 —— 藤田の場合
    5 「日系美術家」、「日系社会」と直面して
    6 アメリカでの制作の実際 —— 1949年という転機
    7 絵空ごとに向かって —— 1940年前後からの変化

    コラム⑲ 旅を記録する(2) 写真

終 章 「二重亡命者」としての晩年

 あとがき
 注
 図版クレジット
 索 引


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