内 容
秘密主義のベールを乗り越える ——。毛沢東ら共産党中枢は、全知の支配者でも無知な指導者でもなかった。社会の実態を掴むべく形作られた制度はどのように作動したのか。今日にも通底する、一党支配下の情報収集・利用のあり方を膨大な史料により解明、中国政治の理解を一新する。
目 次
序 章 一党支配体制は情報をいかに収集・処理したか
1 本書の主題
2 先行研究とその問題点
3 定義、用語、方法、資料
4 本書の構成
第1章 閉じられた情報環境
—— 秘密保持制度の起源と実態
はじめに
1 秘密主義の源流と1949年前後の内外情勢
2 秘密保持制度の形成と変容
3 秘密保持制度の実態
4 制度改革の兆候と挫折
5 永遠の秘密主義 —— 成功体験、支配道具、強迫観念
おわりに
第2章 密使が行き交う秘密通信網
——「機要交通」と「機要通信」の制度的展開
はじめに
1 秘密通信網とは何か
2 党委員会主導体制の出現と蹉跌(1921-50)
3 秘密通信網の模索期(1951-56)
4 党委員会と郵便局の二元体制の成立(1957-)
おわりに
第3章 官僚制と情報収集
——「請示報告制度」の歴史的展開とその実態
はじめに
1 分断化したレーニン主義政党 —— 報告制度の発足(1923-48)
2 本格的なレーニン主義政党への試み① —— 報告制度の統合(1948-51)
3 本格的なレーニン主義政党への試み② —— 報告制度の集権化(1951-)
4 報告制度の病理と毛沢東の解決策
おわりに
第4章 擬似的な報道の自由
—— 新華社の機密レポート『内部参考』の世界
はじめに
1 『内部参考』の起源、性格および位置付け
2 『内部参考』の編集・発行体制とその由来
3 『内部参考』と共産党の権力関係
おわりに
第5章 ものを言う大衆
—— 陳情の制度的展開とその実態
はじめに
1 陳情制度の形成とその由来
2 陳情制度の運用実態
3 党と大衆とのつながり —— その虚像と実像
4 慈父にして暴君 —— 苦闘する人々と指導者の反応
おわりに
第6章 天から降りてくる
—— GIS で見た中央指導者の地方視察と情報収集
はじめに
1 中央指導者による地方視察の空間的特徴
2 地方視察における情報収集と情報操作のせめぎあい
3 毛沢東は皇帝なのか、スターリンなのか
おわりに
第7章 情報はどう利用されたか
—— 大躍進への道
はじめに
1 毛沢東時代と農業集団化
2 農業集団化政策をめぐる毛沢東の情報処理
3 情報経路の機能性と毛沢東の情報利用
4 毛沢東の認知バイアスの根源
おわりに
終 章 情報と権力
1 秘密主義と巨大かつ複雑な情報システム
2 中国共産党とソ連
3 中国共産党と毛沢東
注
あとがき
参考文献
図表一覧
索 引
書 評
『図書新聞』(2024年11月2日号、第3661号、評者:江口伸吾氏)
『週刊読書人』(2024年8月23日号、第3553号、評者:東島雅昌氏)
『週刊読書人』(2024年7月26日号、第3549号、特集「2024年上半期の収穫から」、評者:関智英氏)