内 容
宇宙の原理をめぐるハイブリッドな「知」の生成を描く——。科学革命までの学問を一千年以上にわたり支配したアリストテレス主義。アラビア哲学を介して発展させられた、天と大地をめぐる教説とはいかなるものであり、キリスト教世界の中でどのように受け止められたのか。言語と文明圏をまたいだ自然哲学の展開を、つぶさに解明した気鋭の力作。
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目 次
凡 例
序 章 揺籃期の自然哲学
1 アリストテレスの子供たち —— イブン・ルシュドとアルベルトゥス
2 「12世紀ルネサンス」を超えて —— 西欧における学問環境の変化
3 アリストテレス主義 —— イブン・ルシュドの知的遺産と古代の註解者たち
4 天界と月下界とのつながりという争点
5 各章の概要
第1章 神的な天体
—— アリストテレス主義の〈宇宙神学〉
1 アリストテレスの神学の諸相
2 天界と神的なもの —— アリストテレス『天界について』第1巻第3章・第9章
3 天界の神的なものにかんする〈古代の註解者〉の見解
4 天の神々とヘルメス主義 ——『天界について』第1巻第3章
5 天外の生命体と宇宙の第一原因 ——『天界について』第1巻第9章
第2章 天体の魂
——「天は生きている」という思想
1 「第一動者」とはなにか ——『自然学』第8巻の註解
2 星々の生命 —— アリストテレス『天界について』第2巻第2章・第12章
3 『形而上学』第12巻における天の魂の問題
4 アフロディシアスのアレクサンドロスにおける天の生命の問題
5 天の熱と宇宙の生理学的分析
第3章 自然に秩序を与えるのは何ものか
—— アリストテレス主義の〈摂理論〉
1 哲学者たちの摂理論にたいする神学者たちの批判
2 キリスト教神学における摂理論
3 アリストテレス主義における神的摂理
第4章 元素の生成変化
—— 中世物質理論の基礎
1 アリストテレス『生成消滅論』における〈元素論〉
2 イブン・ルシュドの〈物質主義的〉立場
3 アルベルトゥスの〈形而上学的〉立場
第5章 熱と自然発生
——『気象論』第4巻における生成の一般理論
1 自然の事物の生成と「熱」のはたらき
2 自然発生と生成の一般理論
第6章 形成力
—— 天界と自然界とをつなぐもの
1 形成力、あるいは鉱物を生み出す〈製作者〉
2 動物発生と天の知性
3 アリストテレスとプラトンとの思想的一致
4 生成変化の形而上学的基礎
第7章 アリストテレスの擁護者たち
—— 残存するスコラ自然哲学
1 アリストテレス主義という母胎 —— イブン・ルシュドの世界像
2 アリストテレスの擁護者たち —— ポンポナッツィ、スカリゲル、メランヒトン
終 章
あとがき
註
参考文献
索 引
受 賞
書 評
『図書新聞』(2023年3月4日号、第3581号、評者:石田隆太氏)
『みすず』(2023年1・2月合併号、読書アンケート特集、評者:小澤実氏)
『週刊読書人』(2023年2月3日号、第3475号、評者:小村優太氏)
『週刊読書人』(2022年12月23日付、2022年回顧総特集、評者:檜垣立哉氏)
『図書新聞』(2022年12月24日号、第3572号、特集「22年下半期読書アンケート」、評者:坂野徹氏、中金聡氏、山本貴光氏)
岐阜新聞(2022年12月25日付、読書欄特集「今年の収穫 」)他から(評者:稲垣諭氏)