内 容
『象徴形式の哲学』や『人間』等で著名な20世紀哲学の巨匠が、「自然-認識」問題を基底に据えて個性的統一体としてのルネサンス哲学の全体像を描き出した名著。多様で複雑なルネサンス哲学の構造と展開が、時代の精神史的・文化史的文脈に位置づけ浮彫りにされている。
著者紹介
エルンスト・カッシーラー
(Ernst Cassirer, 1874-1945)
ドイツの哲学者・哲学史家。1919ハンブルク大学教授。’33オクスフォード大学教授。’36スウェーデンのイェテボリ大学教授。’44アメリカに亡命し、イェール大学、コロンビア大学の各教授。新カント派から出発し、科学的認識論の問題から広く精神文化全般にまで及ぶ哲学的基礎づけを試みた思想的巨人。主著『近世の哲学と科学における認識問題』全4巻、『象徴形式の哲学』全3巻など。
目 次
献 辞
凡 例
序 論
ルネサンス哲学の根本性格
ルネサンスの概念
第1章 ニコラウス・クザーヌス
Ⅰ
「ドクタ・イグノランチア」の原理
位階秩序の問題
スコラ論理学の限界
新たな認識形式の要求
プラトン主義の新たな発見
アリストテレスと新プラトン主義
スコラ学への関係
最大としての絶対的なもの
一性と他性
Ⅱ
中世的自然学への対比
地球中心的世界像の放棄
普遍宗教の理念
神の直視の問題
クザーヌス哲学における神秘主義、スコラ学および人文主義
個人の問題
神と世界
キリスト-理念
展開としての認識
時間と歴史
存在と価値
第2章 クザーヌスとイタリア
Ⅰ
クザーヌスの体系の精神史的意義
在俗者的知識の理想
関係の概念
「神の書物」としての自然
尺度基準としての数学
数学的知と技術的知
Ⅱ
フィレンツェのプラトン・アカデミー
フィチーノの教説の歴史的位置と根本性格
フィレンツェ・プラトン主義における美的な根本動機
クザーヌスとフィチーノにおける自由概念
世界と人間の「改革」
人間精神の無限性
クザーヌスとフィチーノにおけるキリスト-理念
第3章 ルネサンス哲学における自由と必然
Ⅰ
フォルトゥーナ-象徴の諸変遷
ルネサンスの文芸におけるフォルトゥーナ-問題
ロレンゾ・ヴァッラ
ヴァッラの著作『自由意志について』
ポンポナッツィにおける意志の自由と必然性
ピコの「人間の尊厳」についての演説
ピコにおける人間性の理念
カルロス・ボヴィルス
ボヴィルスにおける存在と自己意識
「自然」の人間と「わざ」の人間
プロメテウス-動機
ルネサンスにおけるプロメテウス-動機の諸変遷
人間性と自律
Ⅱ
中世およびルネサンスにおける占星術
新たな自然概念の成立に対する占星術の意義
ポンポナッツィによる奇蹟信仰の占星術的批判
占星術的因果性の根本性格
占星術的な歴史哲学
「神々の形姿の変化」
小宇宙-動機
パラケルズス
フィチーノにおける占星術の位置
ピコの占星術批判
因果概念の改変
天才の概念
ケプラーの、占星術に対する位置
ブルーノの『驕れる野獣の追放』
第4章 ルネサンス哲学における主観-客観-問題
Ⅰ
ギリシア哲学における魂と自己意識
プラトンおよびアリストテレスの魂概念
アヴェロエス主義
ペトラルカおよびクザーヌスにおけるアヴェロエス主義との闘い
フィチーノにおけるエロースの教説
エロース説の宗教哲学的意義
認識論および美学へのエロース説の影響
ポンポナッツィの魂論と不死説の批判
アヴェロエス主義およびスコラ心理学への対立
個体性問題の唯心論的把握と自然主義的把握
Ⅱ
新たな自然感情
ペトラルカ
「自然の発見」の方法
テレジオの自然哲学とその認識論的基礎
経験的世界観と魔術的世界観
ルネサンスの自然観における魔術の位置
自然的魔術
レオナルドの真理概念
レオナルドの「自然必然性」の概念
レオナルドの自然観察における理論的契機と美的契機
形式の問題
自然と天才
新たな「自然真理」の概念
数学と芸術理論
プラトン、レオナルド、ガリレイ
神秘的-魔術的自然観の克服
感性の新しい位置づけ
〈純粋〉数学と〈応用〉数学
Ⅲ
アリストテレス自然学の諸前提
場所と運動との相対性の発見
クザーヌスにおける運動の相対性の原理
集合体-空間から体系-空間への移行
空間および世界の同質性
幾何学的基礎概念としての運動
デカルトおよびフェルマにおける座標概念
ジョルダーノ・ブルーノにおける空間、力および生命
ルネサンスの世界感情における根本的対立
原 註
訳 註
訳者あとがき
人名索引
関連書
『ペトラルカ カンツォニエーレ』 フランチェスコ・ペトラルカ 著/池田 廉 訳
『ペトラルカ 凱旋』 フランチェスコ・ペトラルカ 著/池田 廉 訳
『アリオスト 狂えるオルランド』 ルドヴィコ・アリオスト 著/脇 功 訳