内 容
相対主義という時代の趨勢に精神をゆだねるままでよいのか ——。西欧近代からその伝統へと遡り、俗語文学と古典、政体と主体、キリスト教と異教のトポス、人文主義と国家、歴史と他者、の諸局面で、「臨界」の認識を跡づけることにより、「批評」の根源的な力を回復する。
目 次
はしがき
第Ⅰ部 古典と臨界
第1章 俗語文学と古典
1 外国文学研究の臨界
2 国民文学研究の衰退
3 古典の効用
第2章 新歴史主義のニヒリズム
1 「新歴史主義」—— 傾向と対策
2 文化の詩学
第3章 反「文化相対主義」の光
1 アメリカン・マインドの終焉
2 シカゴ・コネクション
3 アラン・ブルームのシェイクスピア
第Ⅱ部 政体と臨界
第1章 月のヴァレーリアあるいは『コリオレイナス』
1 理論と臨界
2 月のヴァレーリア
3 息の構造
第2章 政体と主体と肉体の共和原理あるいは『ジュリアス・シーザー』
1 政 体
2 主 体
3 肉 体
第3章 イアーゴーの庭あるいは『オセロー』
1 イアーゴーの庭
2 世俗的公共圏というプロット
3 「楽園」と自然と「ウィル」
第Ⅲ部 トポスと臨界
第1章 楽園の伝統と世俗化
1 楽園の広がり
2 二つの楽園
3 歴史と自然
第2章 噂・名声の女神の肉体性
1 ミルトン、ウェルギリウス、ボエティウス
2 「スキピオの夢」
3 「政治的美徳」
第3章 チョーサーとイタリア
1 ダンテ転倒
2 ペトラルカとボッカッチョ
第Ⅳ部 人文主義と臨界
第1章 アルベルティーノ・ムッサートの『エチェリーノの悲劇』
1 ある桂冠授与式
2 エチェリーノ・ダ・ロマーノ
3 ブルクハルトの影の下に
4 『エチェリーノの悲劇』
5 狂気と政体
第2章 トマス・モアの人文主義
1 時代の子
2 モア思想の特質
3 『ユートピア』
4 信仰と政治の相克
第3章 エドマンド・スペンサーの『妖精女王』
1 二つの歴史的パースペクティヴ
2 語りのアイロニー
第Ⅴ部 歴史と臨界
第1章 古代ギリシアの顕現
1 ギリシアとは何か
2 ギリシア像のレヴォリューション
3 襲いかかる古代ギリシア
第2章 近代とその超越あるいはレーヴィット=シュトラウス往復書簡
1 1964年
2 1930年代-40年代
3 1946年の「近代論争」
4 結びにかえて
第3章 カール・レーヴィットと日本
1 西洋と東洋
2 補遺:カール・レーヴィット『1936-41年の旅日記』抄訳
結 語
注
あとがき
初出一覧
主要参考文献
人名索引
書 評
関連書
『ペトラルカ カンツォニエーレ』 フランチェスコ・ペトラルカ 著/池田 廉 訳