内 容
エスニック・マイノリティの経済発展を可能にするものとは何か? 在日韓国・朝鮮人による製造業・土木業・パチンコ産業などへの集中と、迅速な産業転換によるダイナミックな発展過程を、差別など既存の説明を乗り越えて鮮やかに解明、世界的視野で移民の経済理論に新たな展望を拓く。
目 次
序 章 なぜ「在日企業」のダイナミズムを問題にするのか
—— 本書の課題と接近方法
1 民族コミュニティへの視座
2 問題の所在 —— 研究史の再検討から
3 分析方法と本書の課題
第Ⅰ部 産業実態分析
はじめに
第1章 戦後の在日韓国・朝鮮人経済の産業動態
はじめに
1 産業構成と動態 —— 企業データの分析
2 既存企業の転業・多角化と新規企業の設立
3 在日産業の分業構造の特性
おわりに
第2章 京都繊維産業における在日企業のダイナミズム
はじめに
1 歴史的前提 —— 1930年代における在日の就労状況および階層分化
2 復興期における在日の起業ブーム
3 戦後の京都繊維産業における在日企業の成長 —— 聞取り調査より
4 在日企業の事業転換と産業構造の動態
おわりに
第3章 パチンコ産業と在日企業
はじめに
1 パチンコ産業における在日企業
2 パチンコ産業の発展と在日の参入
3 在日企業の産業構造とパチンコホール事業
4 在日企業の成長とパチンコホール事業
5 特定民族集団に凝縮される事業情報
おわりに
第Ⅱ部 金融機関分析
はじめに
第4章 在日韓国人による民族系金融機関設立とその基盤
—— 1950~60年代の全国展開を中心に
はじめに
1 民族系金融機関設立に対する日本政府の方針
2 二つ目の民族系金融機関の設立と全国展開の基盤整備 —— 1950年代
3 商銀の全国展開 —— 1960年代
4 政治的背景の経済的帰結
おわりに
第5章 民族系金融機関の資金基盤と経営
はじめに
1 資金調達の特質
2 資産運用の特質
3 民族系金融機関の成長の制約と克服
おわりに
第6章 1970年代における民族系金融機関の金融サービス
—— 朝銀と商銀の競争的な展開から
はじめに
1 1970年代における民族系金融機関
2 資金需要の動向
3 地域別の金利動向の特徴
4 地域内民族系金融機関間競争における政治性の制約
5 民族系金融機関の機能 —— 民族系金融機関の成長と貸出金利
おわりに
第7章 在日企業と取引金融機関
—— 民族系金融機関の役割と限界
はじめに
1 在日企業の産業別取引金融機関
2 資金需要と民族系金融機関の対応
3 在日企業の規模別取引金融機関
4 大阪府における在日企業と取引金融機関
おわりに —— 在日企業成長と民族系金融機関の機能に関する一考察
終 章 戦後における在日産業経済のダイナミズム
はじめに
1 在日産業経済の歴史的考察
2 民族マイノリティ企業の成長にかかわる試論 —— 分析結果の理論的含意
おわりに
注
あとがき
参考文献
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『週刊エコノミスト』(2010年6月1日号、評者:橘川武郎氏)