内 容
移住システムの誕生から「日系ブラジル人問題」発生のメカニズムまで、デカセギをめぐる諸問題を世界的な移民研究の水準で把握、豊かなフィールド調査の成果により労働・生活過程の全体像を初めて本格的に解明するとともに、体系的な移民政策形成の重要性を示した労作。
目 次
序 章 デカセギと移民理論
はじめに
1 ブラジル人の移住過程
2 移民理論の展開とブラジル人
3 顔の見えない定住化と国家・市場・移民ネットワーク
おわりに
第Ⅰ部 国家・市場・移民ネットワーク
第1章 人の移動と国家の制御
—— 出入国管理からネーションフッドの再定義へ
はじめに
1 理論的前提
2 入国管理政策の推移と決定要因
3 統合政策をめぐるジレンマ
4 分析枠組みと日本への適用
おわりに
第2章 企業社会と外国人労働市場の共進化
—— 移住労働者の包摂過程
はじめに
1 理論的前提
2 労働市場への2つの接近方法
3 雇用構造の変動と外国人労働者
4 変容する日本の企業社会と雇用手段
おわりに —— 顔の見えない定住化の基本構造
第3章 移住システムと移民コミュニティの形成
—— 移民ネットワーク論からみた移住過程
はじめに
1 理論的前提
2 移住過程における移民ネットワークの役割
3 移住システムと移民コミュニティの比較分析
おわりに
第Ⅱ部 顔の見えない定住化
第4章 国民国家の境界と日系人カテゴリーの形成
—— 1990年入管法改定をめぐって
はじめに
1 日系人問題への着目
2 在日韓国人問題との交差
3 「定住者」をめぐる諸問題
4 日系人にみる法的資格と社会学的現実
おわりに
第5章 ブラジルから日本への移住システム
—— 市場媒介型メカニズムの形成
はじめに
1 グローバルな人の移動と斡旋組織の成長
2 デカセギから斡旋へ —— ブラジルにおける労働力供給システムの形成
3 斡旋のメカニズム —— 労働のジャストインタイム供給システム
4 斡旋組織への需要 —— 誰が利用するのか
おわりに
第6章 人手不足からフレキシブルな労働力へ
—— 労働市場におけるブラジル人の変化
はじめに
1 業務請負業とブラジル人労働者
2 労働力を編集する業務請負業
3 下請け企業にかかる圧力と労働市場の変容
おわりに
第7章 労働市場のミクロ分析
—— 顔の見えない定住化の進展
はじめに
1 地域社会と業務請負業
2 業務請負業の事業活動の分析
3 インターフェース装置の引き起こす社会問題
おわりに
第8章 移民コミュニティの形成?
—— 社会的ネットワークの再編成をめぐって
はじめに
1 移民コミュニティの機能原理
2 社会的ネットワークの再編成
3 制度の供給とコミュニティの形成
おわりに
第Ⅲ部 多文化共生モデルの陥穽
第9章 市場と地域社会の相克
—— 社会問題の発生メカニズム
はじめに
1 奇妙な現実
2 顔の見えない定住化の政治問題化
3 制度設計なき共生が引き起こす共生社会の矛盾
4 ビジョンなき公共政策の問題点
5 場当たり的対症療法と社会問題の固定化
おわりに
第10章 一時滞在と定住神話の交錯
—— ブラジル人労働者の滞日見通しをめぐって
はじめに
1 デカセギの動機と担い手の変化
2 滞日経験と滞在長期化
3 滞日見通しとブラジル人の分岐
おわりに
第11章 共生から統合へ
—— 権利保障と移民コミュニティの相互強化に向けて
はじめに
1 デカセギをめぐる逆説 —— 顔の見えない定住化の構図
2 「国際化」と「共生」モデルの限界
3 共生から統合へ —— 権利とコミュニティの強化による解決
おわりに
補 遺 調査データについて
あとがき
文献一覧
図表一覧
索 引
書 評
【日本経済新聞書評】