書籍の内容
「歴史」 の場はいかにして形成され、社会に何をもたらしたのか? 地域社会の歴史と民俗を記録した郷土誌と、歴史的記憶のシンボルである記念碑の分析を中心に、近代における歴史文化の形成と、ナショナリズムにつながる歴史意識の具体的な様相を、米・中国・日本にわたって初めて比較史的に明らかにした共同研究の成果。
執筆者一覧
(執筆順、*は編者)
*若尾祐司 (序章、第1章、第9章) 久田由佳子 (第5章)
*羽賀祥二 (第2章、第10章) 小島 崇 (第6章)
溝口常俊 (第3章、第11章) 王 暁葵 (第7章)
和田光弘 (第4章) 加藤久美子 (第8章)
書籍の目次
序 章 近代化と歴史意識
第Ⅰ部 歴史と地誌
第1章 近代ドイツの地域文化と歴史協会 —— 19世紀前半ナッサウ歴史協会の設立と活動
はじめに
1 小公国ナッサウの国家形成
2 歴史協会の設立経緯
3 レスラー時代の協会=組織の確立
4 ハーベル時代の歴史協会=拡張と停滞
第2章 記録化の意図と方法 —— 19世紀日本地誌と民俗記述
はじめに
1 『芸藩通志』 の編纂
2 民俗調査の意図
3 民俗知識の収集と記録
4 君主論と礼楽の形成
おわりに
第3章 近世日本の地誌と地域像 —— 尾張藩撰地誌の世界
はじめに
1 尾張藩撰地誌成立の系譜と 『寛文村々覚書』・『尾張徇行記』
2 実世界 (real world) の復元
3 想像的世界 (imagined world) の発見
4 抽象的世界 (abstruct world) の描出
おわりに
第Ⅱ部 史蹟と記念碑
第4章 記念碑の創るアメリカ —— 最初の植民地・独立革命・南部
はじめに
1 アメリカにおける史蹟と記念碑
2 「最初の植民地」 の記念碑
3 南部における独立戦争の記念碑
おわりに
第5章 セイラムにおける魔女狩りの記憶 —— ニューイングランドの負の遺産をめぐって
はじめに
1 セイラムの魔女狩り
2 300周年以前の事件の記憶
3 魔女裁判300周年 —— 1992年
おわりに
第6章 近代イギリスにおける戦争の記念・顕彰行為
—— 対仏戦争~第一次世界大戦の記念碑
はじめに
1 対仏戦争の記念碑
2 クリミア戦争・ボーア戦争の記念碑
3 第一次世界大戦の記念碑
4 総力戦の記憶化
おわりに
第7章 20世紀中国の記念碑文化 —— 広州の革命記念碑を中心に
はじめに
1 「黄花崗公園」 の建設と記念碑
2 「広州起義烈士陵園」 の建設と記念碑
3 祭祀の様相 —— 「革命先烈記念日」 と 「愛国主義教育基地」
おわりに
第8章 西双版納の周恩来記念碑
はじめに
1 熱帯作物科学研究所内の 「周恩来総理紀念碑園」
2 曼听公園内の 「周恩来総理与各族人民歓度撥水節紀念址紀念碑」
おわりに
第Ⅲ部 民俗と郷土
第9章 19世紀中葉ドイツにおける民俗・郷土研究の出立
—— W・H・リールの革命体験と 「社会的民俗学」
はじめに
1 リールの生涯と研究史
2 三月革命体験と保守主義
3 『地域と人々』 のスケッチ
おわりに
第10章 産業都市化と郷土史の形成 —— 名古屋における博覧会と歴史祭典
はじめに
1 博覧会と歴史祭典
2 原型と波及
3 郷土の歴史像
4 顕彰と記憶化の方法
5 産業都市と歴史遺産
おわりに —— 文明・歴史・ナショナリズム
第11章 歴史家の郷土語り —— 地域論と県民性
はじめに
1 語りの地域論
2 東西文化論
3 中心と周辺
4 先進地と後進地
5 日本の縮図論
6 郷土語りの継承
おわりに