内 容
エトノス移民論の視座に立ち、マレー半島に移住したインド移民の移動・定着過程を、大英帝国の移民政策をも含めて明らかにするとともに、移民のコミュニティや複合的ネットワークの実態、そして統合と分化を深めていく移民社会の構造を、現地調査と文献資料の両面から照らし出した労作。
目 次
序
第Ⅰ部 国際移民研究の現状
第1章 国際移民研究の課題と動向
本章の課題
1 国際人口移動とは
2 エコノス移民論とエトノス移民論
3 国際労働市場論 —— エコノス移民論 (1)
4 移民政策論 —— エコノス移民論 (2)
5 移動契機・社会変容論 —— エトノス移民試論
小 結
第2章 南アジア・インド系移民研究の課題と動向
本章の課題
1 南アジア系移民・インド系移民とは
2 主要な研究視角
3 国際労働力移動論 —— エコノス移民=インド系移民論 (1)
4 植民地政策・移民政策論 —— エコノス移民=インド系移民論 (2)
5 送出地・受入地・移民集団
6 多元社会論 —— エトノス移民論の視座
小 結
第3章 タミル移民研究の課題と動向 —— エトノス移民論の視角から
本章の課題
1 タミル人とタミル移民
2 タミル移民研究の動向
3 タミル移民研究の課題・仮説・分析方法
第Ⅱ部 移動と定着
第4章 移民送出政策と移民徴募システム
—— 英領インドと英領マラヤの政府・企業・移民仲介人の対応
本章の課題
1 移民析出の諸条件
2 植民地政府の移民政策と徴集機構
3 移民徴集の公的機構と財政基盤
4 移民基金の徴収と運営
小 結
第5章 マレー連合州の移民・労働政策
—— 1910年代のプランテーション入植法をもとに
本章の課題
1 「入植移民」 政策
2 「労働者移民」 政策
3 移民政策の社会・経済背景
小 結
第6章 プランテーションとタミル移民
—— マレーシア中部キャメロン高原の事例分析
本章の課題
1 プランテーション開発とタミル移民集団
2 インド系移民の定住パターン
小 結
第7章 移民社会と複合ネットワーク —— ボー・プランテーションの事例から
本章の課題
1 タミル移民コミュニティの概要
2 南部地区住民と南インド —— 定住地と移民母地との関係
3 南部地区住民の生活と生活慣習
4 タミル住民の複合ネットワーク
小 結
第8章 キラーニー・NUPW・講
—— プランテーションの自律的秩序と秩序維持組織
本章の課題
1 プランテーションの管理機構
2 プランテーション労働組合 —— NUPW
3 インフォーマル・システム —— 講
小 結
第Ⅲ部 統合と分化
第9章 タミル移民の宗教祭礼と集団統合 —— タイ・プーサム祭の意義
本章の課題
1 タイ・プーサム祭 —— その宗教文化的コンテクスト
2 祭礼プロセスと祭礼組織 —— 移民統合の社会システム化
3 タイ・プーサム祭 —— 移民の統合・分化の同時進行
小 結
第10章 移民母村の村落統合と変容 —— パンダーラムと社会・文化秩序
本章の課題
1 Ⅰ村落に関する仮説的条件 —— 農民とサーヴィス・カーストの関係
2 「村落」 —— 社会経済圏と文化・儀礼圏
3 パンダーラム —— その職能・「儀礼報酬」・組織
4 儀礼圏と村落秩序の変動 —— パンダーラム、ガウンダ、ナーダール間の
社会・儀礼関係
小 結
第11章 マラヤの 「社会改革運動」 —— 「タミル自尊運動」 とその矛盾性
本章の課題
1 「社会改革運動」 に関する研究動向
2 「タミル改革運動」 の時代背景
3 「タミル改革協会」 と 「社会改革運動」
小 結
第12章 南インドの 「社会改革運動」
—— 社会改良主義から社会主義的コミュナリズムへ
本章の課題
1 南インドの 「社会改革」 —— 「世論」 から見た改革運動
2 ペリヤールの 「社会改革運動」
小 結
結 論
1 エトノス移民論におけるタミル移民
2 「三要素相関モデル」 によるタミル移民