内 容
初期近代イングランド文化のなかのシェイクスピア —— セクシュアリティと結婚、社会変動と資本主義、王権と民衆文化、個人主義の誕生、宗教改革などのテーマを取り上げ、同時代の文献や図像に隠された重層的な意味の解読を通して、さまざまな力が干渉し合うダイナミックな場としてシェイクスピア劇をとらえた労作。
目 次
序 章 初期近代イングランドの文化
——〈イメージ〉と〈ことば〉
Ⅰ セクシュアリティ
第1章 家父長制とセクシュアリティの〈ことば〉
——『ロミオとジュリエット』
1 家父長制の〈ことば〉と欲望
2 引き裂かれた「洞窟」
3 「性愛と死」の〈ことば〉
第2章 結婚と性愛のイコノグラフィー
——『夏の夜の夢』
1 あずまやと恋人たち
2 ヴィーナスとマルス
3 「楡にからみつく蔦」と舞踏
4 結婚祝賀 —— 詩と絵と舞台
Ⅱ 社会変動
第3章 〈運命の女神〉と資本主義の結婚
——『ヴェニスの商人』
1 〈運命の女神〉
2 商人と金貸しとユダヤ人
3 〈正義〉のナイフと〈慈悲〉の詭弁
4 利子とユダヤ人と資本主義
5 家父長制と資本主義の同盟
第4章 異性装と社会変動
——『お気に召すまま』
1 ズボンをはく女
2 「無口な女」、「どなる女」、そして……
3 異性装、少年俳優、両性具有
4 飢餓と貧民と〈ホスピタリティ〉
5 長子相続と不運な弟たち
6 アイデンティティの回復と社会変革
第5章 国家と王権の不安
——『あらし』
1 〈船〉の転覆
2 理想の〈国家〉
3 王子の教育
4 〈グレート・ブリテン〉と〈王〉の図像
5 王権と議会と植民地
6 ライオンから〈リヴァイアサン〉へ
Ⅲ 民衆文化
第6章 カーニヴァルとレントの闘い
——『ヘンリー四世』
1 〈肉体〉とカーニヴァルの時間
2 カーニヴァルとレントの対立
3 〈肉〉と〈魚〉の闘いと民衆の広場
4 〈病む肉体〉と〈ボディー・ポリティク〉
5 歴史的時間の勝利
6 「民衆文化の改革」と近代
第7章 シャリヴァリと鹿の角
——『ウィンザーの陽気な女房たち』
1 イングランドのシャリヴァリ
2 フォールスタフへの社会的懲罰
3 鹿の角とアクティーオン
4 逸脱と混乱から認識へ
5 儀礼の構造
6 女たちの勝利
第8章 〈さかさま世界〉と狂気と革命
——『リア王』
1 〈さかさま世界〉のトポス
2 〈足枷にかけられた正義〉と〈武器をとる女〉
3 〈ペリカン娘〉たち
4
5 「犬や馬や鼠にさえ……」
6 〈時禱書〉から〈さかさま世界〉版画へ
Ⅳ 個人主義
第9章 個人主義の空間的位相
——『ハムレット』
1 個人空間の発見
2 〈ヴォイド〉—— 菓子と虚無
3 〈死〉の恐怖と社会的装飾
4 ロング・ギャラリーと細密画
5 物語による〈主体〉の構築
6 劇場空間の個人主義
Ⅴ 宗教改革
第10章 魔女と地獄と女性恐怖
——『マクベス』
1 ヨーロッパの魔女たち
2 ジェイムズ1世とスコットランドの魔女
3 17世紀イングランドの魔女
4 『マクベス』の魔女たち
5 もう一人の魔女
6 地獄の門をたたく
7 魔女の論理
8 地獄を歩く女
第11章 〈イメージ〉と〈ことば〉の葛藤
—— ヘンリー八世から『ヘンリー八世』まで
1 「宗教改革」の二つの見方
2 テューダー王朝の歴史と偶像破壊
3 〈イメージ〉と〈ことば〉の戦い
4 寓意画〈エドワード6世と教皇〉
5 〈エリザベス
6 エリザベスと〈真実〉のイコン
7 シェイクスピアの『ヘンリー8世』
付 論 20世紀のシェイクスピア研究
—— 分析批評から文化研究へ
1 ニュー・クリティシズムの時代
2 歴史主義と主題研究
3 フェミニストの批評 —— 家父長制とジェンダーの問題
4 ニュー・ヒストリシズムから文化研究へ
あとがき
注
図版リスト
索 引