内 容
「輔弼」として知られる天皇への助言システムは、昭和期までは有効に機能し、軍統制の一大焦点となっていた。天皇-軍関係の核心を、明治の建軍から二度の大戦まで初めて統一的に解明。多角的な輔弼構造の形成と衰微を実証し、軍部の台頭や戦争責任問題にも新たな光を当てる意欲作。
目 次
凡 例
序 章 天皇と陸海軍の近代史
1 問題の所在 —— 政軍関係史のなかの天皇
2 課題と分析視角 —— 陸海軍の自律化をめぐる天皇-軍関係
3 先行研究と本書の構成
——「天皇の軍隊」をめぐる政治史的・軍事史的研究の接合
第Ⅰ部 天皇の軍事輔弼体制と軍統制
第1章 明治天皇と軍事輔弼体制の始動
—— 元帥府・軍事参議院の成立
はじめに
1 元帥府設置以前の軍事輔弼体制
2 元帥府の設置・運用と陸海軍対立
3 軍事参議院の設置と元帥府改革構想
—— 軍事輔弼体制再編の試み
おわりに
第2章 大正天皇の第一次世界大戦
—— 戦争指導の実態と軍事輔弼体制
はじめに
1 大正天皇の登場と軍事輔弼体制
2 大正天皇と第一次世界大戦
3 大正天皇と軍事輔弼体制の親和性
おわりに
第Ⅱ部 陸海軍の軍事輔弼体制と軍統制
第3章 軍政優位体制と軍事輔弼体制の相克
—— 陸軍の軍事輔弼体制再編と宮中・海軍の動揺
はじめに
1 元帥個人への公式下問停止問題
2 「臣下元帥」生産凍結論と陸海軍
3 陸軍による軍事輔弼体制再編と海軍・宮中
おわりに
第4章 陸海軍「協同一致」の論理の動揺
—— ロンドン海軍軍縮条約の衝撃
はじめに
1 日露戦後の元帥府と軍事参議院の機能
2 ロンドン海軍軍縮条約批准時の陸海軍連携
3 海軍単独軍事参議会開催とその影響
おわりに
第5章 陸海軍の統制力強化構想と「臣下元帥」
—— 最後の「臣下元帥」東郷平八郎と陸海軍
はじめに
1 最後の「臣下元帥」東郷平八郎と海軍の軍事輔弼体制
2 昭和天皇と「皇族元帥」
3 2・26事件と軍事参議官
おわりに
第6章 戦時期の元帥府復活構想と昭和天皇の戦争指導
—— 戦争指導体制と軍事輔弼体制の交錯
はじめに
1 皇族総長更迭と元帥府復活構想
2 太平洋戦争期における「臣下元帥」再生産論の台頭
3 戦争末期の戦争指導体制と元帥府復活構想の帰結
おわりに
終 章 近代日本の天皇と「軍部」
1 天皇の軍事輔弼体制
—— 明治天皇・大正天皇の軍事指導と陸海軍
2 陸海軍の軍事輔弼体制
—— 陸海軍の自律化と昭和天皇の軍事指導
注
あとがき
図表一覧
参考文献
索 引