内 容
満洲事変以降、固有の矛盾と制約をはらんだ日本の中国支配において、外国資本や海関制度の掌握にむけた試みは前例のない展開をみせた。既存の法秩序や欧米の利権を残存させたまま進んだ特殊な支配の内実を、見過ごされてきた在華外国人の反応の諸相とともに、日・英・中の視点をクロスさせ立体的に描き出す。
目 次
序 章 日本による事実上の支配と在華権益の再編
1 在華外国権益の形成とその変容
2 日本による中国占領地支配の進展
3 分析視角と本書の意義
第Ⅰ部 満 洲
第1章 満洲国における門戸開放原則の変容
はじめに
1 満洲国による外国権益の再編
2 門戸開放問題と経済統制
3 九ヶ国条約と日英の思惑
おわりに
第2章 海関制度からの離脱
—— 満洲の海関をめぐる交渉
はじめに
1 満洲国の海関政策とその反応
2 帰順か、抵抗か —— 大連関の接収と海関職員
おわりに
第Ⅱ部 華 北
第3章 日本の華北支配と開灤炭鉱
はじめに
1 「事実上の政府」への開灤炭鉱の対応
2 日本による開灤炭鉱への接近とその限界
3 イギリス人の対応――天津・ロンドン間の認識の相違
4 日本による開灤炭鉱の接収と経営
おわりに
第4章 板挟みになる海関
—— 天津の海関をめぐる交渉
はじめに
1 海関機能の維持にむけた折衝 —— 日本からの提案
2 イギリスによる対案の提示と国民政府の説得
3 マイヤーズ税務司の決断
おわりに
第Ⅲ部 華 中
第5章 イギリスの積極的介入と海関制度
—— 上海の海関をめぐる交渉
はじめに
1 政府機関か、国際機関か —— 上海における交渉の頓挫
2 日英関税取極めの成立 —— 東京における交渉
おわりに
第6章 日中戦争下における海関人事をめぐる攻防
はじめに
1 日本人職員の増員圧力 —— 広州陥落まで
2 「全面的掌握」の困難 —— 広州陥落以後
3 汪精衛政権下における海関人事
おわりに
第7章 日中戦争下における揚子江航行問題
はじめに
1 揚子江の軍事封鎖
2 東亜新秩序声明と英米協調の模索
3 華中占領地支配の進展と揚子江開放問題
おわりに
第Ⅳ部 華 南
第8章 日中戦争下における珠江航行問題
はじめに
1 航行の限定的再開 —— 岡崎・ブラント協定
2 珠江開放宣言と対英米関係
3 開放に向けた施策と折衝
おわりに
終 章 在華権益の変容とその行方
1 本書の総括
2 戦中・戦後の在華イギリス権益