内 容
日本帝国50年の歴史を通じて形成された植民地経済の構造と特質をふまえて、その最後の姿となった「大東亜共栄圏」の全容を初めて客観的に描き出す。マクロ的数量データをもとに、交易や金融の実証的分析から、アジア各地に大きな影響を及ぼした円域経済の実態を捉えた、必読の成果。
著者の『日本植民地経済史研究』 『「満洲国」経済史研究』に続く、日本帝国史研究3部作の最後を飾る著作。
目 次
はしがき
凡 例
図表一覧
第Ⅰ部 「日本植民地帝国」論
第1章 日本植民地帝国の展開と構造
はじめに
Ⅰ 「公式帝国」の形成
Ⅱ 「非公式帝国」の拡大
Ⅲ 南方進出と「大東亜共栄圏」
むすび —— 日本帝国の終焉
第2章 近代日本帝国における植民地支配の特質
はじめに
Ⅰ 遅れてきた帝国
Ⅱ 東アジアの帝国
Ⅲ 帝国の皇民化
Ⅳ 帝国の工業化
むすび
第3章 日本植民地統治における「同化主義」の構造
はじめに
Ⅰ 「同化主義」の対応概念
1)「同化主義」対「分離主義」
2)「同化主義」対「協同主義」
3)「同化主義」対「自治主義」
Ⅱ 「同化主義」に関する二次元モデル
Ⅲ 「同化主義」の日本的特質
むすび
第Ⅱ部 「大東亜共栄圏」論
第4章 「大東亜共栄圏」構想とその構造
——「大東亜建設審議会」答申を中心に
はじめに
Ⅰ 「大東亜共栄圏」構想の成立
Ⅱ 「大東亜建設審議会」について
Ⅲ 「大東亜建設審議会」答申における「大東亜共栄圏」構想
1)大東亜経済建設基本方針
2)大東亜産業建設計画
3)大東亜物流金融基本政策
4)「中核体」対「外郭体」
むすび
第5章 「大東亜共栄圏」交易論
はじめに
Ⅰ 「大東亜交易」という構想
1)日中戦争と戦時経済統制の開始
2)太平洋戦争と「大東亜共栄圏」の建設
3)「大東亜計画交易」という概念
Ⅱ 「大東亜交易」の方式と体制
1)円域内交易
2)対仏印およびタイ交易
3)南方占領地交易
4)交易営団の設置
Ⅲ 「大東亜交易」の統計的実態
1)「大東亜共栄圏」交易の概要(価額)
2)「大東亜共栄圏」交易の概要(品目と数量)
3)「中国」と「南方」に関する補足的考察
むすび
第6章 「大東亜共栄圏」と日本の対外収支
はじめに
Ⅰ 戦時期日本の対外収支統計
1)統計概観
2)項目分類とその内容
3)地域分類とその問題
Ⅱ 戦時期日本の対外収支(総括)
1)前史概観
2)貿易(交易)収支
3)貿易外(交易外)収支
4)金銀収支
5)収支不均衡の決済
Ⅲ 戦時期日本の対外収支(地域別)
1)統計概観
2)対「満洲国」収支
3)対蒙彊・華北収支
4)対華中・華南収支
5)対タイ・仏印収支
6)対「南方甲地域」収支
むすび
第7章 「大東亜金融圏」論
はじめに
Ⅰ 「大東亜金融圏」構想の成立
1)近衛新体制と「基本国策要綱」
2)太平洋戦争と「我国対外金融政策ノ根本方針ニ関スル件」
3)大東亜建設審議会と「大東亜金融財政交易基本政策」
Ⅱ 「大東亜金融圏」構想の工作
1)円系通貨圏の拡大
2)双務的清算協定
3)特別円制度
4)日銀改組と綜合清算制度構想
Ⅲ 「大東亜金融圏」構想の崩壊
1)「大東亜金融圏」の決済構造
2)「円」等価リンク政策とその矛盾
3)価格差調整の諸方策
むすび
第Ⅲ部 「南方共栄圏」論
第8章 「南方圏」交易論
—— 市場から資源へ 貿易から交易へ
はじめに —— 外南洋・南方・東南アジア
Ⅰ 「南方圏」交易前史 —— 1920年代・30年代
1)地域別・国別概観
2)商品別概観
3)貿易摩擦の発生
Ⅱ 「南方圏」交易の形成 —— 占領地統合体制の整備
1)「南方」進出とその目的
2)対蘭印・対仏印経済交渉
3)「南方占領地」経営方針
4)「南方交易」の体制整備
Ⅲ 「南方圏」交易の展開 —— 資源の内地還送を中心に
1)「南方物資取得三ヵ年計画」
2)内地還送の実績
3)石油の内地還送
4)南方への物資供給
Ⅳ 「南方圏」交易の崩壊 —— 資源の内地輸送を中心に
1)海上輸送力の喪失
2)石油輸送線の切断
3)終戦処理
むすび —— 東南アジア貿易の復活
第9章 「南方圏」国民所得の推計について
—— 解題・高橋泰蔵『南方経済に於ける国民所得の推算に関する一資料』
はじめに
Ⅰ 南方経済に於ける国民所得の推算に関する一資料
Ⅱ 東京商科大学東亜経済研究所・南方派遣調査班
Ⅲ 戦時期の国民所得推計と国家資力研究所
むすび
附 図 東京よりの等距離図
附 表 戦時「日本帝国」関係略年表
あとがき
参考文献一覧
索 引
書 評
『史学雑誌』(第123編第1号、2014年1月、評者:吉井文美氏)
『歴史と経済』(第217号、2012年10月、評者:山崎志郎氏)
日本経済新聞(2011年12月11日付、評者:中島賢太郎氏)