内 容
明治の産業革命をリードし瞬く間に世界市場を制覇した日本綿紡績・織物業の競争力の源泉とは。近代的大紡績企業と、近世から続く農村織物産地や流通を担う問屋・商社などの連携による成長過程を初めて解明、衰退に向かう戦後も視野に、巨大産業の興隆を圧倒的な密度とスケールで描く決定版。
目 次
序 章 日本綿業の生成と発展
—— 紡績会社・織物産地・問屋
1 日本経済史・経営史上における綿業の意義
2 本書の構成
第Ⅰ部 日本綿業の興隆
第1章 近代日本綿紡績業確立の背景
—— 明治期を中心にみた農村織物業の特質
はじめに
1 明治期農村織物業における原料糸の変遷
—— 手紡糸・輸入機械糸・国産機械糸
2 農村における繊維品の自家生産 —— 兵庫県農村の事例
3 産地綿織物業と景気変動
4 産地綿織物業における三度のイノベーション
おわりに
第2章 近代綿紡績業の勃興と定着
はじめに
1 明治20年代における近代的綿紡績業の発展
2 日清戦後の不況
3 日露戦後の新たな展開
4 財閥と繊維産業
おわりに
第3章 綿紡績業の技術と労働
はじめに
1 イギリスにおける展開
2 アメリカにおける展開
3 日本における展開 —— 大阪紡績会社の事例を中心に
おわりに
補論1 戦前期日本綿業における女性労働
はじめに
1 「女工哀史」
2 「原生的労働関係」の展開
3 綿紡績業の労働条件の急速な改善
4 開明的経営者と政府の役割
5 第一次世界大戦以降の労働運動と ILO
6 戦間期の紡績業における女性労働者
おわりに
第4章 産地綿織物業の展開
—— 徳川期から明治期まで
はじめに
1 徳川時代における産地綿織物業
2 明治前期における産地綿織物業
3 明治中・後期における産地綿織物業
おわりに
第5章 産地綿織物業における問屋制の盛衰
はじめに
1 1880年代における問屋制の確立
2 問屋制の変質と衰退
おわりに
第6章 賃機から力織機工場へ
—— 明治中・後期における泉南綿織物業の場合
はじめに
1 分析視角
2 泉南における第一次力織機化
3 織元の対応 —— 力織機工場か賃機か?
おわりに
補論2 明治後期の賃機工賃
—— 大阪府泉南地方の帯谷商店資料
はじめに
1 原資料について
2 集計方法
3 結果とその解釈
小 括 近代日本綿業の形成 —— 近代産業と在来産業の併進
第Ⅱ部 日本綿業の黄金時代
第7章 戦間期における日本綿業の事業戦略
—— 紡績業を中心として
はじめに
1 伝統的戦略の展開 —— 水平的結合と垂直的統合
2 新戦略の展開
おわりに
第8章 戦間期における産地綿織物業の躍進
はじめに
1 戦間期日本の産地綿織物業
2 綿織物業の地域類型
3 産地綿織物業の発展戦略
4 日本綿業のなかの産地織物業
おわりに
第9章 今治綿織物業の展開
はじめに
1 今治綿織物業の発展
2 今治綿織物業における同業者団体と工業試験場
おわりに
補論3 備後地方で繊維産業がなぜ発展したのか
第10章 日本綿業と中国市場
—— 1914~1930年
はじめに
1 第一次世界大戦前後における日本綿業と中国市場
2 第一次世界大戦を画期とする中国紡績業の発展
3 1920年代日本綿業の中国進出
4 1920年代後半以降における中国綿布市場の変容
おわりに —— 1930年代への展望
第11章 在華日本紡績同業会の活動
はじめに
1 在華日本紡績同業会の設立
2 設立の背景
3 在華日本紡績同業会の活動
おわりに
第12章 綿紡績企業における経営者群像
はじめに
1 和田豊治と富士瓦斯紡績会社
2 資産家大原孫三郎の企業者活動と社会事業
3 大原孫三郎と武藤山治 —— 経営理念と経営管理
おわりに
小 括 日本綿業の世界制覇 —— 大企業と中小企業との連携
終 章 日本の経済発展と綿業
—— 総括と展望
1 総 括
2 展 望
資料紹介 『日本綿糸紡績業沿革紀事』
付 録 1 斉藤恒三宛伊藤伝七書翰
付 録 2 泉大津織物業の歩み —— 大野歳雄氏に聞く
注
あとがき
初出一覧
参考文献
図表一覧
索 引
書 評
『歴史評論』(2023年7月号、第879号、評者:仁藤將史氏)
『大原社会問題研究所雑誌』(第775号、2023年5月号、評者:ジャネット・ハンター氏)
『日本歴史』(2023年1月号、第896号、評者:橋口勝利氏)
『図書新聞』(2022年11月19日号、第3567号、評者:渡邊純子氏)