内 容
帝国拡大の原動力となり、世界でも最高水準を誇った満鉄の鉄道技術はいかにして伝播していったのか。見過ごされてきた本業・鉄道業の姿をはじめて解明、その経済的・技術的インパクトを数量的に位置づけるとともに、東アジア鉄道システムの形成から、戦後再編の新たな全体像を描き出す。
目 次
巻頭地図
序 章 鉄道帝国と満鉄
1 鉄道帝国のフロンティアとしての満鉄
2 満鉄史における鉄道研究
3 植民地経済史研究との接点
4 本書の構成
第Ⅰ部 技術と効率
第1章 満鉄における鉄道事業の展開と経営実態
—— 効率と収益
はじめに
1 満鉄の成立と鉄道投資の特徴
2 輸送効率の向上と経営安定化
3 中東鉄道の輸送実態と経営成績
4 委託経営による鉄道網の拡張と経営パフォーマンス
おわりに
第2章 全要素生産性(TFP)比較分析
—— 日本、台湾、朝鮮、満洲
はじめに
1 日本帝国における鉄道業の歴史的展開
2 インプットとアウトプットの推定方法
3 インプットとアウトプットの比較
4 相対的全要素生産性と利潤率の推計
おわりに
第3章 「満鉄型」技術の形成と洗練化
—— 移植と伝播
はじめに
1 満鉄の設立と技術の導入
2 技術蓄積と自家製作
3 全満洲鉄道化と技術の拡散
4 戦時型技術とその戦後史的限界
おわりに
第Ⅱ部 労働と賃金
第4章 労働力構成と労務管理
—— 鉄道業を中心として
はじめに
1 労働力の移動と構成変化
2 系統別・身分別配置と内部養成
おわりに
第5章 賃金制度の形成と変容
——「満鉄大家族主義」の物質的基盤
はじめに
1 賃金制度の形成と第一次世界大戦のショック
2 賃金制度の大改革とその構造的特徴
3 満洲事変後の国線編入と賃金制度の変容
4 戦時下の賃金制度の変容とその帰結
おわりに
第6章 満鉄鉄路総局における人的運営
——「素質向上」と「人の和」
はじめに
1 在満中国鉄道の人的運営と満洲事変の勃発
2 満鉄鉄路総局の設置と人的運営
おわりに
第7章 社員会の組織と運営
——「鵺」と「大家族主義」
はじめに
1 満鉄社員の危機感と社員会の成立
2 社員会の組織と待遇改善
3 満洲事変の勃発と社員会の組織的拡張
4 戦時下の社員会の動員と組織再編
おわりに
第Ⅲ部 拡張と戦争
第8章 第一次世界大戦以降の山東鉄道
—— 最初の社員派遣と占領鉄道の運営
はじめに
1 ドイツの鉄道敷設とその運営
2 日本の鉄道占領と鉄道管理体制
3 中国への返還と鉄道運営方式の特質
おわりに
第9章 満洲国国有鉄道の委託経営
—— 社線から国線へ、さらに北鮮線へ
はじめに
1 満洲事変前の満洲鉄道
2 満洲事変の勃発と満鉄の動員
3 満鉄鉄路総局の設置と満洲国国有鉄道の委託経営
4 満鉄鉄路総局の職制改正と鉄道運営の統一化
5 満鉄鉄道総局の設置と全満洲鉄道の一元化
おわりに
補 論
第10章 鉄道警護と鉄道愛護運動の展開
——「王道は鉄道より」
はじめに
1 満洲事変と鉄道警護
2 鉄道愛護運動と「民路合作」
おわりに
第11章 戦時下満鉄の輸送戦
—— 輸送統制とその実態
はじめに
1 日中全面戦争と軍事動員
2 アジア・太平洋戦争と戦時陸運非常体制
おわりに
第Ⅳ部 解放と再編
第12章 ソ連軍の満鉄接収と国民政府の東北鉄路管理
—— 植民地鉄道からの戦後再編(1)
はじめに
1 ソ連軍の占領と満鉄の接収
2 ソ連軍の撤退と国府側の鉄道再編
3 東北鉄路の施設復旧と国府側の鉄道運営
おわりに
第13章 中国共産党の「新型鉄路」と新中国建設
—— 植民地鉄道からの戦後再編(2)
はじめに
1 東北鉄路総局の設置と人的運営の展開
2 鉄道運営の実態と国共内戦の展開
3 新中国の鉄道部と鉄道輸送・復旧の一元的運営
おわりに
第14章 新中国鉄道における大躍進運動と文化大革命
—— 計画経済下の技術停滞
はじめに
1 大躍進運動期の鉄道投資と労務対策
2 文化大革命期の無政府主義と鉄道輸送の展開
3 全要素生産性(TFP)分析と経営収支分析
おわりに
終 章 東アジア鉄道史のなかの満鉄
1 鉄道技術の移植と伝播
2 高収益性の実現と大陸政策の担い手
3 植民地鉄道と植民地類型
4 戦争動員と輸送力の事前的配分
5 敗戦と内戦の中での鉄道の戦後再編
6 技術体系としての戦後中国鉄道
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
書 評
『歴史評論』(2022年12月号、第872号、評者:老川慶喜氏)
『鉄道史学』(第40号、2022年10月、評者:三木理史氏)
『経営史学』(第57巻第2号、2022年9月、評者:兒玉州平氏)
『日本植民地研究』(第34号、2022年6月、評者:平山勉氏)
『中国研究月報』(2022年4月号、第76巻第4号、評者:大野太幹氏)
『近現代東北アジア地域史研究会 News letter』(第33号、2021年12月、評者:大野絢也氏)