内 容
植民地下の台湾は、たんに帝国の食糧供給基地にとどまったのではなかった。見過ごされてきた工業化の契機を、豊かな農産品の加工・商品化と、それに伴う機械化・電動化に見出し、小零細企業が叢生する農村からの発展経路を実証、戦後台湾経済の原型をとらえた注目の成果。
目 次
地 図
序 章 台湾工業化社会の形成
1 植民地工業化論と台湾
2 課題の敷衍と参照枠組み
3 視角と構成
第Ⅰ部 日本統治期台湾社会の工業化
第1章 市場社会の変容
—— 工業化社会の始まり
1 日本統治初期台湾の分業構造
2 分業構造の変容(1905-1940年)
3 1920年代の変化の背景 —— 農業植民地化と工業化
まとめ
第2章 小経営的工業化への道
—— 中小零細工業の発展
1 中小零細工業の発展と諸類型
2 中小零細工業発展の諸条件
まとめ
第3章 小経営・内需・工業化
—— 島内市場と台湾人商工業者
1 小経営の動向
2 島内市場の発展
3 物品販売業者と工業化
まとめ
第4章 小農社会のなかの工業化
—— 農村工業と労働供給
1 農村工業の発達
2 農村工業の経営形態と業種
3 工業化と農家の労働供給
まとめ
第Ⅱ部 工業化社会の形成と産業
第5章 民族工業と帝国経済圏
—— 製帽業による世界市場への進出
1 製帽業の概観
2 生産組織 —— 問屋制家内工業
3 帽子の流通と金融
まとめ
第6章 「米の帝国」と工業化
—— 籾摺・精米業の展開
1 台湾工業化における籾摺・精米業
2 籾摺・精米業の発展過程とその特質
3 籾摺・精米業発展の経済的動因
4 籾摺・精米業の発展と台湾の小経営的工業化
まとめ
第7章 「機械を使用する社会」の形成
—— 機械市場と人的資本蓄積
1 日本統治期台湾の機械工業の発展水準
2 機械市場の動向と植民地的規定性
3 機械工業における工場経営の実態
4 日本統治期の到達点と戦後への展望
まとめ
終 章 「緑の工業化」と解放後の台湾経済
参考文献
あとがき
初出一覧
図表一覧
索 引
受 賞
第43回(2022年度)「アジア経済研究所発展途上国研究奨励賞」
書 評
『経営史学』(第57巻第4号、2023年3月、評者:四方田雅史氏)
『アジア経済』(第63巻第4号、2022年12月、評者:北波道子氏)
『中国研究月報』(2022年10月号、第76巻第10号、評者:湊照宏氏)
『歴史学研究』(2022年8月号、第1025号、評者:都留俊太郎氏)
『日本台湾学会報』(第24号、2022年6月、評者:清水美里氏)
『アジア研究』(第68巻第2号、2022年4月、評者:やまだあつし氏)