内 容
戦後の混乱と破壊を乗りこえ、社会主義化の最前線かつ最大の生産拠点へと成長した中国東北。鞍山や瀋陽といった巨大都市の内外で、帝国支配の「遺産」が時代をこえて幾重にも再編されるプロセスを初めて実証。改革開放後の変容も視野に、歴史を貫く流れを比類なき密度で描く。
執筆者
《編 者》 松本俊郎(序章、第1、4、8章、終章)
《執筆者》 張暁紅(第2、5、6、9章)
山本裕(第3、7、10章)
目 次
序 章 満洲国以後の東北工業
1 中国経済の「連続」と「断絶」
2 長期的視野と時期区分
3 工業都市の多様性
4 資本主義から社会主義への移行
第Ⅰ部 満洲国の遺産と国共内戦
第1章 鞍山の復興と中国企業の叢生
—— 社会主義化の初期条件
はじめに
1 満洲国期の企業動向
2 ソ連軍・国民党支配期における企業動向
3 1940年代後半の共産党政治と企業動向
おわりに
第2章 国共内戦下の工業化
—— 哈爾濱・瀋陽を移動する軍需生産
はじめに
1 満洲国崩壊前後の工業の状況
2 哈爾濱根拠地の軍需生産
3 瀋陽工業生産の回復と発展
おわりに
第3章 新京における工業化
—— 膨張する「国都」とその限界
はじめに
1 業種別工業化の動向
2 各種産業ごとの工場の実態
3 新京における自動車産業の軌跡
おわりに
第Ⅱ部 共産党政権下の工業化
第4章 鞍山における基幹産業の構築
—— 母企業の創設
はじめに
1 旧日系企業の接収と再編
2 中国企業の接収と再編
おわりに
第5章 旧日系企業の再編と「南廠北遷」
—— 瀋陽・哈爾濱の重工業化の新展開
はじめに
1 瀋陽の国営企業の大規模化
2 国営機械企業の再編
3 哈爾濱の重工業化と南廠北遷
おわりに
第6章 旧日系企業の下請から新中国の担い手へ
—— 瀋陽における中国機械企業の変容
はじめに
1 旧日系企業の下請から国営企業の加工訂貨へ
2 接収された企業の事例
3 社会主義改造を経験した私営企業の事例
おわりに
補論 1980年代機械工業にみる満洲国期との連続と断絶
第7章 長春における工業化の展開
—— 廃墟からの出発と自動車工業の創生
はじめに
1 国共内戦期から長春解放時の接収状況
2 戦後における長春の工業化
おわりに
第Ⅲ部 社会主義改造の軌跡
第8章 鞍山における三反五反運動と公私合営化
—— 企業改革と企業家の動向
はじめに
1 三反五反運動と公私合営化
2 鞍山における公私合営化の展開
おわりに
第9章 急がされた社会主義改造
—— 加工訂貨の効用と瀋陽・哈爾濱
はじめに
1 加工訂貨への依存と三反五反運動の影響
2 公私合営化への急転回
3 公私合営化した企業の事例と経営者
おわりに
第10章 長春の旧糧桟にみる戦後の企業再編
—— 国共内戦期・共和国成立期の益発合
はじめに
1 満洲事変以前・満洲国期における益発合
2 国共内戦期の益発合
3 共和国成立時の益発合
4 公私合営化進展のなかの益発合
おわりに
終 章 東北の工業化から社会主義中国の工業発展へ
1 3つの課題と検証結果
2 東北工業の歴史からみる中国の現在と未来
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
書 評
『経営史学』(第59巻第2号、2024年9月、評者:林采成氏)
『日本植民地研究』(第36号、2024年6月、評者:木越義則氏)
『歴史学研究』(2024年8月号、第1051号、評者:峰毅氏)
『歴史評論』(2024年5月号、第889号、評者:菅野智博氏)
『アジア経済』(第65巻1号、2024年3月、評者:金子文夫氏)
『朝鮮族研究学会誌』(第13号、2023年12月、書評会報告録)
『図書新聞』(2023年7月15日号、第3599号、評者:三木理史氏)
『週刊読書人』(2023年7月7日号、第3496号、評者:久保亨氏)