内 容
貿易、海賊・海難、移民など、清末中国の「海の歴史」に注目し、福建人の活動とイギリスの役割を焦点に、漢文・英文史料を博捜することで、アヘン戦争の再定義を含め、中国を新たな時代へと突き動かした力を多角的に明らかにする。海と陸、近世と近代を接続し、歴史像を刷新した労作。
目 次
凡 例
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緒 論
1 本書の課題
2 本書の対象・構成・史料
3 閩南と廈門 —— 地域と歴史
第Ⅰ部 清朝の沿海秩序の崩壊
—— 開港前
第1章 閩粤沿海民の活動と清朝
—— 19世紀前半のアヘン貿易活動を中心に
はじめに
1 清朝の沿海支配の動搖
2 アヘン貿易の拡大と閩粤沿海民
3 清朝の対応
おわりに
補 論 零丁洋と広州のあいだ
—— 1830年代カントンアヘン貿易の利権
はじめに
1 1830年代前半の取引
2 広州近郊の利権構造の崩壊
3 カントンのアヘン利権の規模と構造の変容
おわりに
第2章 清朝と漢奸
—— アヘン戦争時の福建・広東沿海民対策を中心に
はじめに
1 アヘン戦争の展開と漢奸問題
2 団練・郷勇
3 封港
おわりに
第Ⅱ部 華南沿海秩序の再編
—— 19世紀中葉
第3章 閩粤海盗とイギリス海軍
—— 19世紀中葉、福建沿海における海賊問題
はじめに
1 開港と海賊の勃興
2 海賊への対応 —— 清朝とイギリス海軍
3 福建人海賊の衰退と広東人海賊の台頭
4 イギリス海軍と地域秩序の回復
おわりに
第4章 難破した「夷狄」
—— 19世紀後半、華南における海難対策の変容
はじめに
1 清朝の海難対策
2 イギリスの対応
3 秩序回復と海難問題
おわりに
第5章 秘密結社と華人
—— 5港開港期、廈門における華人と小刀会の乱
はじめに
1 華人と地域社会
2 小刀会の結成と弾圧
3 廈門小刀会の乱
4 小刀会勢力の東南アジアへの展開と東南沿海の反乱
おわりに
第6章 誘拐する人・される人
—— 19世紀中葉廈門における苦力貿易の盛衰
はじめに
1 苦力貿易の勃興
2 苦力貿易の諸問題
3 廈門暴動と苦力貿易への態度
4 苦力貿易の衰退と移民の東南アジアへの集中
おわりに
第Ⅲ部 貿易の変動と華人の行動
—— 世紀転換期
第7章 アジア間競争の敗者
—— 清末廈門における交易構造の変動
はじめに
1 開港後における廈門の交易構造
2 廈門の商品輸移出変動
3 日本の台湾領有と廈門交易
4 廈門交易構造の変動
おわりに
第8章 善堂とアヘン
—— 19世紀後半、廈門におけるアヘン課税問題
はじめに
1 廈門のアヘン貿易とアヘン税の拡大
2 1880年代のアヘン課税請負問題
3 善堂と捐税
4 中国アヘン課税問題
おわりに
第9章 利用される「帝国」
—— 清末廈門における英籍華人問題
はじめに
1 オールコックの服装規定の成立
2 華人保護と清朝地方官僚
3 英籍華人の経済活動と清朝地方官僚の対応
4 英籍華人と中国人のあいだで
5 イギリスと清朝のはざまで
おわりに
結 論
あとがき
註
参考文献
図表一覧
索 引
中文要旨
英文要旨
書 評
『社会経済史学』(第82巻第2号、2016年8月、評者:中島楽章氏)
『史学雑誌』(第123編第9号、2014年9月、評者:岡本隆司氏)