内 容
昭和天皇の死後、公表・公刊が進んだ一次史料を精読し、イギリスの君主との実態比較も踏まえつつ、明治以来の立憲君主制の展開と昭和天皇・宮中・元老・内閣・軍の動向、そして立憲君主制崩壊の政治過程を、当時の法・政治慣行や天皇・皇族の公的イメージにまで立ち入り、あたうかぎり客観的にとらえた渾身の力作。
目 次
凡 例
序 論 近代日本の政治慣行と昭和天皇
—— 国際比較の視点から
第Ⅰ部 天皇・皇族をめぐる政治と制度
第1章 立憲君主制の形成と展開
—— 明治天皇から大正天皇・皇太子裕仁へ
はじめに
1 伊藤博文・明治天皇の立憲君主制への模索
2 日露戦争後の立憲君主制への道
3 大正デモクラシーと立憲君主制
おわりに
第2章 政党政治の定着と立憲君主制
—— 摂政裕仁の登場
はじめに
1 牧野伸顕宮相の宮中改革と掌握
2 牧野宮相の政治的台頭と元老
3 政党内閣下の牧野内大臣の就任
4 牧野内大臣・元老西園寺の連携と立憲君主制
5 牧野の摂政教育・政治関与と首相の権限
おわりに
第3章 田中義一内閣と立憲君主制の混迷
—— 明治天皇の理想化と昭和天皇の政治関与
はじめに
1 昭和天皇・牧野内大臣の政治関与の拡大
2 田中内閣の首相権限の拡大と限界
—— 枢密顧問官・栄典の推薦を中心に
3 昭和天皇の政治関与の失敗 —— 張作霖爆殺事件の処理
4 皇族の動向
おわりに
第4章 浜口雄幸内閣と立憲君主制の動揺
—— ロンドン海軍軍縮条約と天皇の調停放棄
はじめに
1 枢密院等の昭和天皇不信と浜口内閣への反感
2 昭和天皇と宮中側近の政治関与
—— ロンドン海軍軍縮条約の締結過程の再検討
3 皇族の動向と宮中改革
4 首相権限と枢密顧問官などの推薦
おわりに
第5章 立憲君主制の空洞化と満州事変への道
—— 第二次若槻礼次郎内閣と昭和天皇をめぐる政治
はじめに
1 昭和天皇の民政党内閣への政治関与
2 栄典の推薦に関する宮中の権限の増大と内閣の権限
3 枢密院の改革問題
4 枢密顧問官の推薦をめぐる民政党内閣の攻勢
5 国粋主義者の改革構想と閉塞感
おわりに
第6章 満州事変の勃発と立憲君主制の危機
—— 海外派兵慣行と独断出兵
はじめに
1 満洲事変の勃発と統帥慣行
2 海外派兵の統帥慣行の成立と展開
—— 明治・大正・昭和初期の海外派兵
3 事変の拡大と昭和天皇
おわりに
第7章 犬養毅内閣と立憲君主制の崩壊
—— 事変の展開と首相権力の衰退
はじめに
1 事変収拾への試み
2 枢密顧問官の推薦と補充
3 国粋主義者の宮中改革構想
4 宮中席次改革問題
5 五・一五事件と立憲君主制の崩壊 —— 西園寺公望の「神通力」の限界
おわりに
第Ⅱ部 天皇・皇族をめぐるイメージ
第1章 大正デモクラシーと皇族イメージ
はじめに
1 皇太子渡欧後の皇族の「平民」化・「健康」イメージと「科学」化イメージ
2 関東大震災と皇族イメージの再統制
3 震災からの復興と皇族の「平民」化・「健康」イメージと「科学」化イメージ
の展開
おわりに
第2章 明治天皇の理想化と昭和天皇・皇族イメージ
はじめに
1 明治への回顧
2 践祚前の摂政裕仁・皇族イメージ
3 践祚後の昭和天皇・皇族イメージ
4 大礼前後の明治への回顧気運の強まり
5 徳富蘇峰のイギリスの立憲君主制イメージ
おわりに
第3章 浜口雄幸内閣期の天皇・皇族イメージ
—— 昭和天皇の軍紀回復への努力
はじめに
1 昭和天皇・皇后と皇太后
2 秩父宮と勢津子妃
3 高松宮と喜久子妃
4 その他の皇族と王公族
おわりに
第4章 満州事変と天皇・皇族イメージの神秘化
はじめに
1 天皇の大元帥としてのイメージの強まり
2 満洲事変の展開と天皇の神秘化の始まり
3 天皇神秘化への努力と不毛な成果
おわりに
結 論
注
あとがき
人名索引
書 評
【読売新聞】