内 容
広島・長崎だけではない、惑星的な被曝の全体像へ ——。現在の科学的知見や幅広い聞き取り調査を踏まえて、核実験・原発事故・ウラン採掘の被害者をはじめ、これまで不可視化されてきた世界のヒバクシャの実態を追究。原爆の記憶や福島の経験と接続するとともに、核抑止論の前提を鋭く問い直す。
著者紹介
ロバート・A・ジェイコブズ
(Robert A. Jacobs)
シカゴ生まれ。イリノイ大学にて博士号を取得。2005年、広島市立大学広島平和研究所に着任。2016~2025年、同研究所教授。専門はアメリカ史、科学史、核の文化史。主な著作に、The Dragon’s Tail: Americans Face the Atomic Age(2010年、邦訳は『ドラゴン・テール —— 核の安全神話とアメリカの大衆文化』2013年)他がある。
(所属などは本邦訳刊行時のものです。)
目 次
日本語版に寄せて —— メイド・イン・ジャパン
はじめに
序 章 放射線にさらされ、不可視化されるもの
ブラボー実験
グローバル・ヒバクシャ
犠牲者を定義する
冷戦下の核戦争
子孫を死に至らしめる
国家史を越えて
第Ⅰ部 科 学
第1章 爆心地
核兵器の作用
広島と長崎における疾病と死亡率
好 機
ABCC と寿命調査
寿命調査の内在的問題
寿命調査の外在的問題
むすびに
第2章 残存する粒子
向骨性核種
核実験場での疾病と死亡
残留する放射線の害
生態系に組み込まれる放射性核種
短期的・長期的な疾病
世界各地の放射性トレーサー
グローバル生態系に遍在する人為的起源の放射性降下物
むすびに
第Ⅱ部 人 々
第3章 共同体の崩壊
粒子に囲まれた子育て
分断される家族
受け継がれてきた知の鎖を断ち切る
数えられた人々、数えられなかった人々
むすびに
第4章 汚染の隠蔽
核災害後の人々と言説の管理
寿命調査の兵器化 —— 放射性降下物のさらなる不可視化
自然と汚染空間の浄化
森林火災と野生生物
共同体の経済的相互依存と文化的自己決定
不可視化されたものを見る目を養う
むすびに
第Ⅲ部 軍 事
第5章 汚染対象の選定
ビキニとエニウェトクの選定
カザフスタンとノバヤゼムリャ(ソ連の核実験)
ネバダ(米国の核実験)
オーストラリアとキリバス(英国の核実験)
アルジェリアと仏領ポリネシア(フランスの核実験)
ロプノール(中国の核実験)
むすびに
第6章 限定核戦争としての冷戦
グローバルにみた核実験
地球規模の熱核戦争としての第三次世界大戦
ソ連と米国による自国民に対する戦争としての冷戦
放射線兵器として核兵器を捉える
「長い平和」としての冷戦
限定核戦争
むすびに
第Ⅳ部 未 来
第7章 スローモーションの核戦争
核技術の適切な管理
核技術における管理不全
使用済み核燃料の適切な保管
無能さの現れとしての深地層への保管
先行き不明な境界線を引く
遠い将来とのコミュニケーション戦略
合理的な人間と非合理的な人間
時間的な暴力
むすびに
おわりに —— 目を見開くこと
謝 辞
訳者あとがき
注
索 引
関連書
『ヒロシマ』 ラン・ツヴァイゲンバーグ 著/若尾祐司・西井麻里奈・髙橋優子・竹本真希子 訳
『戦後ヒロシマの記録と記憶 上・下』 若尾祐司・小倉桂子 編
『20世紀物理学史 上・下』 ヘリガ・カーオ 著/岡本拓司 監訳/有賀暢迪・稲葉 肇 他訳
『20世紀環境史』 J・R・マクニール 著/海津正倫・溝口常俊 監訳
『グローバル冷戦史』 O・A・ウェスタッド 著/佐々木雄太 監訳/小川浩之・益田 実・三須拓也・三宅康之・山本 健 訳