内 容
トランスナショナルな政治の現実へ ——。露ウ戦争に至る、ソ連解体後の「分離政体」をめぐる争いは、安定から破壊まで、さまざまな道筋をたどった。その違いを生んだ要因は何か。現地アクターへの精力的なインタビューをふまえ、分離紛争が加熱する過程を国際法や社会矛盾も見据えて解明、平和維持のための処方箋に再考を促す。
「…… 拙速なソ連分割の後遺症、貧困化、ポピュリズム、基幹民族制が生み出す相対的多数派の思い上がり、相手の言い分を聞かない正義感、選良機能を果たさない選挙、相手国よりも国内世論を意識して行われる強硬外交 —— こうした問題を無視しては、旧ソ連の分離紛争は理解できまい。そしてこうした視点から旧ソ連の分離紛争を見るとき、それが日本政治にとって決して対岸の火事ではないと、読者諸氏も感じるのではなかろうか。……」(「あとがき」より)
目 次
序 章
第1章 ソ連解体期の分離紛争頻発の原因
—— 行政境界線の国境への機械的転換
1 破綻国家を生み出す国際法の現行解釈
2 Uti possidetis juris の概史
3 社会主義連邦の解体には不向きだった uti possidetis juris
本章のまとめ
第2章 分離紛争管理の機構と処方箋
1 停戦機構の諸類型
2 紛争解決手段の諸類型
本章のまとめ
第3章 第一次南オセチア戦争
—— 合同統制委員会方式の誕生
1 言語政策から自治州のステータス問題へ
2 1991年の戦況
3 ロシアの仲介と合同統制委員会システムの創設
4 南オセチア方式の沿ドニエストル紛争への移植
本章のまとめ
第4章 アブハジア戦争
—— 合同統制委員会方式の移植の失敗
1 ダゴムィス密約説
2 開 戦
3 死産に終わった合同統制委員会方式
4 戦後の紛争管理機構とアブハジア封鎖
5 1998年5月戦争
6 第二次南オセチア戦争前の land-for-peace の模索
本章のまとめ
第5章 グルジアの薔薇革命と第二次南オセチア戦争
1 南オセチアにおける合同統制委員会システムの発展
2 2004年夏の軍事衝突再開
3 2006年以降の紛争激化、サナコエフの並行政府
4 風前の灯の南オセチア
5 開戦と戦争の実態
6 ロシア介入の理由
7 国家承認を避けるための最後の試み
8 親国家に秋波を送り続けるロシアの政治家
本章のまとめ
第6章 2010年代半ばからの分離紛争激化の原因
1 親国家の貧困化
2 NGO 出身の政治家たち
3 アイデンティティ政治、地政学への争点逸らし
4 領土併合に踏み込んだロシア
第7章 ウクライナの悲劇
—— ドンバス戦争から露ウ全面戦争へ
1 マイダン革命からドンバス戦争へ
2 ドンバス問題 —— ミンスク合意の失敗
3 NATO拡大問題 —— バイデンからトランプへ
4 露ウ戦争
5 ウクライナにおける再家産化と戦争遂行
6 ロシアの低コスト戦争の行き詰まり
本章のまとめ
第8章 非承認国家カラバフの滅亡
1 第一次カラバフ戦争とサムヴェル・ババヤン
2 占領地問題
3 ラヴロフ・プランへの長い道のり
4 カラバフの滅亡原因に関する研究史
5 四月革命への道
6 パシニャン、アルメニアの防衛力を破壊
7 パシニャン対 land-for-peace
8 第二次カラバフ戦争
9 2021年議会選挙 —— アルメニアにとっての最後のチャンス
10 アルメニア安全保障の「多角化」とカラバフの滅亡
11 カラバフのアルメニアへの過剰依存
本章のまとめ
第9章 モルドヴァ政治の地政学化とガガウズ・沿ドニエストルの意外な平穏
1 モルドヴァにおける行動連帯党の覇権
2 ロシア指導部のモルドヴァ政策の消極性
3 ガガウズ危機の再燃とその限界
4 沿ドニエストルの孤立主義化
本章のまとめ
終 章
注
あとがき
図表一覧
索 引





