内 容
1994年の悲劇を導いた力学は、「多数派部族による少数派の虐殺」という標準的な解釈では捉えきれない。脱植民地化から体制の転換を経て内戦へと向かう複雑な過程を、旧宗主国や国連の動向、冷戦などの国際的な文脈に置きなおして丹念にたどり、その深奥から理解を一新する意欲作。
目 次
地 図
序 章 ルワンダの政治とエスニシティを再考する
1 1994年のジェノサイド
2 エスニシティと政治をめぐる視角
3 ルワンダ史の研究方法
4 本書の構成
第Ⅰ部 革命・独立前のルワンダ
第1章 植民地化以前のルワンダと植民地支配の影響 19世紀~20世紀中盤
はじめに
1 ニギニャ王国の成立と拡大
2 ドイツによる植民地支配
3 ベルギーによる委任統治
おわりに
第2章 革命前夜の改革 1950年代中盤~59年10月
はじめに
1 国際連合の信託統治
2 政党政治の始まり
3 立憲君主制の提案とムタラ王の死
おわりに
第Ⅱ部 革命・独立とエスニシティ
第3章 万聖節の騒乱とその影響 1959年11~12月
はじめに
1 万聖節の騒乱
2 ベルギーの対応
3 騒乱の影響
おわりに
第4章 協調の模索 1960年1~7月
はじめに
1 コンゴ独立とベルギーの政策変化
2 政党間協調と様々な提案
おわりに
第5章 革命の完成とエスニックな暴力 1960年7月~61年2月
はじめに
1 地方選挙とその影響
2 国連での議論、冷戦とルワンダ
3 ギタラマのクーデター
4 頻発する暴力と難民
おわりに
第6章 そして独立へ 1961年3月~62年7月
はじめに
1 ベルギーの政権交代と国際的地位の回復
2 国政選挙と王政廃止
3 独立の達成
4 暴力の拡大とさらなる難民の発生
おわりに
第Ⅲ部 革命・独立後のルワンダ
第7章 フトゥ共和制期のルワンダ 1962~90年
はじめに
1 カイバンダ時代のルワンダ —— 政党政治の終わりとフトゥ内対立
2 カイバンダ時代の難民問題と国際関係
3 ハビャリマナ時代のルワンダ —— 一党体制の継続と国際援助
4 ルワンダ国内の生活・地方の様子
おわりに
第8章 内戦からジェノサイドへ 1990~94年
はじめに
1 内戦の開始と複数政党制の導入
2 和平協定の締結と急進派の台頭
3 ジェノサイドの特徴
4 ジェノサイドの展開と内戦の終結
おわりに
第Ⅳ部 ジェノサイド後のルワンダ
第9章 新しいルワンダの建設とエスニックな対立の克服をめざして 1994~2017年
はじめに
1 新しいルワンダとルワンダ人
2 経済成長とその問題
3 民主主義と独裁のはざまで
4 ルワンダと国際社会
5 正義の追求と和解の可能性
おわりに
第10章 過去をめぐる対立
—— 歴史認識の変遷と記憶の多様性
はじめに
1 トゥチ中心の歴史認識
2 フトゥ中心の歴史認識
3 ジェノサイド後のルワンダにおける歴史問題
4 ジェノサイド後の「正史」と様々な記憶
おわりに
終 章 歴史から学ぶ
はじめに
1 ルワンダの政治とエスニシティを振り返る
2 ルワンダ史の教訓と今後の課題
おわりに
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『アフリカ研究』(99号、2021年5月、評者:片山夏紀氏)
『アジア・アフリカ地域研究』(2020年 第20-1号、評者:近藤有希子氏)
『国際安全保障』(第47巻第2号、2019年9月、評者:クロス京子氏)
『アジア経済』(第60巻第3号、2019年9月、評者:三須拓也氏)
『図書新聞』(2019年6月1日号、第3401号、評者:饗場和彦氏)
関連書
『グローバル冷戦史』 O.A.ウェスタッド 著/佐々木雄太 監訳/小川浩之・益田 実・三須拓也・三宅康之・山本 健 訳
『ネイションとエスニシティ』 A.D.スミス 著/巣山靖司・高城和義他 訳