内 容
リベラル平和構築論を超えて ——。15万人に及ぶ犠牲者を出し、日本も関わるアジアの代表的地域紛争の和平をいかに実現すべきか。徹底した現地調査により、分離独立紛争とその影に隠れた実態を解明、外部主導の支援の限界を示して、現地社会の視点をふまえた平和構築のあり方を考える。
目 次
略語表
地 図
はじめに
序 章 リベラル平和構築論とミンダナオ紛争
1 なぜ「平和構築」が重要なのか
2 先行研究の批判的検討
3 分析概念
4 調査手法と制約
5 主な用語の説明
6 本書の構成
第1章 海域イスラーム社会から米国による国民国家形成へ
はじめに
1 ミンダナオ・スールーの基層社会とイスラーム受容
2 東南アジアのイスラーム化とミンダナオ・スールーにおける受容
3 ミンダナオ・スールー地域でのイスラーム王国の設立と発展
4 米国・日本植民地政府によるフィリピン統治
5 米国植民地政府によるミンダナオ・スールー地域の統治
小 括
第2章 フィリピン独立後のミンダナオ統治
—— イスラーム系反政府武装勢力の生起と発展
はじめに
1 独立後ミンダナオのムスリム統合政策とその帰結
2 モロ民族解放戦線による分離独立運動と比政府のミンダナオ統治
3 ムスリム・ミンダナオ自治地域政府の成果と課題
小 括
第3章 バンサモロによる平和構築への展開
はじめに
1 モロ・イスラーム解放戦線の設立と展開
2 比政府とモロ・イスラーム解放戦線の和平プロセス
3 ドゥテルテ政権下における新たな平和構築の実践
小 括
第4章 複雑化・多様化する紛争・暴力の構造
—— ムスリム・クラン間抗争と分離独立紛争の関係性
はじめに
1 「リド」言説
2 クラン間抗争
3 ミンダナオの紛争と暴力の発生状況
4 マギンダナオ虐殺事件はなぜ起こったのか
5 イスラーム系過激主義勢力の台頭による紛争・暴力の複雑化
小 括
第5章 下からの平和構築
—— マギンダナオ州ダトゥ・パグラス町とウピ町の事例
はじめに
1 調査の方法
2 ダトゥ・パグラスの事例 —— 伝統的首長による平和構築の実践
3 ウピの事例 —— 三民族共存社会での平和構築の実践
小 括
終 章 リベラル平和構築論を超えて
1 紛争・暴力・平和の構造的メカニズム
2 新たな平和構築への視座 —— 公共空間の創出を目指して
3 平和構築の未来と支援のための示唆
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『アジア経済』(第63巻第2号、2022年6月、評者:渡辺綾氏)
『東南アジア研究』(58巻2号、2021年1月、評者:武内進一氏)
日本経済新聞(2020年12月26日付、読書欄特集「回顧2020 私の3冊」、評者:中沢孝夫氏)