書籍紹介

自然科学

森林の系統生態学

ブナ科を中心に
広木詔三 著

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価格 5,400円
判型 A5判・上製
ページ数 388頁
刊行年月日 2020年
在庫状況 在庫有り
ISBNコード 978-4-8158-0987-4
Cコード C3045

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内 容

従来の生態学が偏重しがちであった個体群ではなく、歴史性を担う種に注目し、遷移現象やすみ分けなど、樹木の種間関係を通じて森林群集を空間的・時間的に捉え直す。日本の多くの森林で優占種となっているブナ科を通して、系統分類学と生態学の統合を試みた、エコロジーの新地平。


目 次

 はじめに

序 章 種の特性と群集
  1 種の認識について
    1-1 種についての認識の変遷
    1-2 種の概念について
  2 種の実在性について
    2-1 種の実在性についての認識
    2-2 三中による種の実在性の否認
    2-3 認知能力の生得性と種の認識の問題
  3 種分化と系統的放散
    3-1 種分化と形態的多様性
    3-2 種分化をとおしての系統的放散
  4 種と群集
    4-1 種と群集をつなぐ系統群
    4-2 種と群集の特性
    4-3 群集の複雑性と多様性
    4-4 群集生態学
    4-5 群集についての全体論と還元論

  第Ⅰ部 植物の系統と分類
       —— ブナ科の位置付け

Ⅰ-1 植物の系統と被子植物
  1 植物の系統
    1-1 ライニアとマツバラン
    1-2 裸子植物
  2 被子植物の多様性
    2-1 被子植物の誕生
    2-2 被子植物の多様性と系統
    2-3 樹木と草本の分化
  3 草本の特殊化の典型例 —— 塩生植物の生存戦略
    3-1 ホソバノハマアカザの種子の二型性
    3-2 2種類の種子の発芽特性の違い
    3-3 ホソバノハマアカザとハママツナのすみ分け
    3-4 二年生草本ハマサジの生存戦略

Ⅰ-2 ブナ科の系統と学名
  1 ブナ科の系統
    1-1 ブナ目
    1-2 ナンキョクブナ科
    1-3 世界のブナ科
    1-4 日本のブナ科
  2 ブナ科における系統と新しい分類体系
    2-1 ブナ科の系統
    2-2 ブナ科における亜科の区分について
    2-3 コナラ属における新しい分類体系
  3 果実と殻斗の進化
    3-1 Forman によるカクミガシの発見
    3-2 ブナ科における果実と殻斗の進化
    3-3 ナンキョクブナ科における殻斗と果実
  4 ブナ科と学名
    4-1 学名について
    4-2 学名と図鑑・植物誌
    4-3 ツブラジイ、スダジイおよびオキナワジイの学名の変遷
    4-4 ツブラジイとスダジイにおける種名の逆転
    4-5 ミズナラの学名
  エピソード1【学名の分類学の難しさ】

  第Ⅱ部 樹木の生活史と生態
       —— ブナ科に即して

Ⅱ-1 ブナ科の生活史
  1 ブナ科の種子発芽
    1-1 短期発芽と長期発芽
    1-2 シラカシの種子発芽
    1-3 クヌギの種子発芽
    1-4 ブナの種子発芽
  エピソード2【松原輝男さんとの出会い】
  2 ブナ科の種子と果実
    2-1 種子と果実の大きさが意味するもの
    2-2 カバノキ科の種子との比較
    2-3 ブナの結実周期
  エピソード3【ブナの実拾って17年】
  3 樹木の萌芽再生
    3-1 萌芽再生の意義
    3-2 根の貯蔵養分と萌芽再生
    3-3 ブナ林構成種3種における萌芽特性の違い

Ⅱ-2 ブナ科における近縁種の分布、生態および雑種形成
  1 アベマキとクヌギ
    1-1 アベマキとクヌギの分布
    1-2 アベマキとクヌギの形態の違い
    1-3 アベマキとクヌギの種子発芽特性と星状毛の有無
    1-4 アベマキとクヌギの雑種形成と交雑帯について
    1-5 クヌギの植栽と帰化植物の可能性
    1-6 山形県に分布するアベマキ
  2 ツブラジイ、スダジイおよびオキナワジイ
    2-1 スダジイとツブラジイの分布
    2-2 スダジイとツブラジイの形態と生活史の違い
    2-3 スダジイとツブラジイの生態的特性の違い
    2-4 スダジイとツブラジイの雑種について
    2-5 東三河における植栽起源のスダジイの分布拡大
    2-6 葉の表皮組織が2層であることの意味
    2-7 スダジイの起源と人間による伝搬説
    2-8 氷期におけるスダジイの分断と日本産シイ類の系統について
  エピソード4【シイの実拾って11年】

Ⅱ-3 フモトミズナラの分類学的位置付けと生態
  1 フモトミズナラの分類学的位置付けをめぐって
  2 フモトミズナラのカシワモドキ説
  3 フモトミズナラの遺伝子解析の研究
  4 フモトミズナラの雑種起源説
  5 フモトミズナラの生態
  エピソード5【フモトミズナラを見つづけて27年】

  第Ⅲ部 森林のダイナミクス
       —— 火山植生の遷移を中心に

Ⅲ-1 植生遷移研究の歴史的概観
  1 植生遷移研究の始まりと古典的な論争の時期
  2 遷移の古典理論の完成
  3 クレメンツの遷移理論の構造とその問題点
  4 遷移研究におけるその後の展開
  5 遷移理論におけるパラダイム転換
  6 火山植生遷移の研究史概略

Ⅲ-2 桜島における火山植生遷移
  1 田川による火山植生遷移の研究
    1-1 田川の研究の意義
    1-2 桜島における溶岩上の初期遷移
  2 田川の研究における問題点
    2-1 遷移後期に優占する樹種の問題
    2-2 森林伐採の影響
    2-3 空間的な配置から時間軸を読み取る問題
    2-4 極相に達するまでの時間
    2-5 果たしてスダジイ林は極相と呼べるのか

Ⅲ-3 三宅島溶岩上における火山植生遷移
  1 三宅島における噴火、火山噴出物、および植生の概況
    1-1 噴火と火山噴出物
    1-2 植生の概況
  2 1962年溶岩上における植生遷移
    2-1 1962年溶岩上における植生の概況
    2-2 種の侵入パターン
    2-3 3種における種子散布特性の違い
  3 1874年溶岩上における植生の発達と遷移
  4 発達したスダジイ林とタブノキ林
    4-1 古い溶岩上のスダジイ林
    4-2 大路池わきのタブノキ林
  5 三宅島における遷移のパターン、メカニズム、モデル
    5-1 植生遷移のパターン
    5-2 遷移のメカニズム
    5-3 ストレスと撹乱を組み込んだ森林動態のモデル
  6 三宅島における植生遷移の特色
    6-1 オオバヤシャブシとフランキアの共生
    6-2 三宅島ではカシ類が欠如すること
    6-3 三宅島で植生遷移の進行が速いと考えられる理由
    6-4 局所的極相という概念

Ⅲ-4 磐梯山における火山植生遷移
  1 磐梯山の噴火と植生遷移
    1-1 磐梯山における遷移研究の意義
    1-2 磐梯山の噴火史概略
  2 植生パターンを成立させる要因
  3 岩塊地における森林の成立と遷移
    3-1 先駆種と後続種
    3-2 胸高直径と樹齢
    3-3 イタヤカエデとミズナラの侵入パターンの違い
    3-4 アカマツの植栽と森林の遷移
  4 泥土地帯における植生遷移
    4-1 ススキ草原の遷移
    4-2 湿性遷移
  5 遷移の後期過程における問題
    5-1 ブナの侵入が遅いのはなぜか
    5-2 山腹岩塊上における混交林の問題
    5-3 丸山ブナ林

Ⅲ-5 穂高岳右俣谷の渓谷林における森林のダイナミクス
  1 穂高岳右俣谷の概況
  2 右俣谷の渓谷林における樹種構成
  3 サワグルミの結実周期と実生の消長
    3-1 サワグルミの結実周期
    3-2 サワグルミの実生の消長
  4 サワグルミとトチノキの生存戦略の違い
  5 雪崩崩落跡地における植生遷移
  6 ヒロハカツラの生存戦略
  エピソード6【右俣谷における雪崩との出会い】

Ⅲ-6 大根山湿地における植生遷移
  1 大根山湿地の概況
  2 大根山湿地の地形、水系および水位
  3 大根山湿地における樹林の発達
  4 森林伐採の時期と湿地の拡大
  5 大根山湿地の誕生と衰退をめぐって

Ⅲ-7 遷移理論に関する諸問題
  1 倉内の植生遷移に関する研究の検討
  2 遷移における位相の問題
  3 極相概念のゆらぎ
  4 種の位置付けに関する問題
  5 熱帯と温帯における遷移現象の違い
  エピソード7【チャンスと出会い】

  第Ⅳ部 すみ分けと種分化

Ⅳ-1 すみ分け論
  1 渓流性昆虫におけるすみ分け
    1-1 今西のすみ分け原理
    1-2 谷田によるシマトビケラ幼虫の研究
  2 すみ分け概念の拡張
    2-1 ニッチ概念の概略
    2-2 ニッチ概念の問題点
    2-3 すみ分けとニッチ
    2-4 種間関係と競争
    2-5 ハッチンソンの洞察
    2-6 すみ分け概念の拡張
    2-7 すみ分けの英文表記について

Ⅳ-2 樹木におけるすみ分け
  1 樹木におけるすみ分け現象の発見とその認識
    1-1 針葉樹類におけるすみ分け現象の発見
    1-2 北米ナラ類における種間関係の解釈をめぐって
    1-3 スギ(裸子植物)とブナ(被子植物)におけるすみ分け
  2 ブナ科の系統群におけるすみ分け
    2-1 日本のブナ科の系統群におけるすみ分けのパターン
    2-2 ブナとイヌブナのすみ分け
    2-3 コナラ節におけるすみ分け
    2-4 ブナとナラ類の関係
    2-5 カシ類におけるすみ分け
  3 ブナ科以外の系統におけるすみ分け
    3-1 ヤナギ属の系統群における種のすみ分け
    3-2 バラ科のサクラ類の系統群における種のすみ分け
    3-3 ムクロジ科のカエデ属の系統群における種のすみ分け
    3-4 カバノキ科の系統群における種のすみ分け
  4 種のすみ分けと森林帯
    4-1 モミとツガのすみ分け —— 太平洋側針広混交林
    4-2 イスノキとイチイガシ —— 暖温帯林
  5 すみ分けと生態的統合

Ⅳ-3 樹木における種分化
  1 コナラ属における種の問題
  2 ミズナラにおける種内文化
    2-1 北海道北部海岸に分布するミズナラのエコタイプ
    2-2 ミズナラから分化しつつあるミヤマナラ
  3 モンゴリナラの系統と種分化
    3-1 モンゴリナラとミズナラの分化
    3-2 分類学的系統と遺伝子の系統
  4 フモトミズナラの誕生と分布拡大
  5 種分化と断続平衡論
    5-1 オニグルミの起源について
    5-2 断続平衡論からみた種分化
  エピソード8【一般教育に携わって35年】

  第Ⅴ部 森林群集論

Ⅴ-1 森林の成り立ちと構造特性
  1 樹木と環境
    1-1 森林を成り立たせる要因
    1-2 複合要因としての風ストレス
    1-3 植生と群系
  2 森林と階層構造
  3 細胞膜とのアナロジー
  4 植生連続体説
  5 連続体としての森林群集

Ⅴ-2 樹木社会学批判
  1 森林を社会として捉えることの問題点
  2 今西の種社会概念と種の認識
  3 樹木の情報伝達機構について
  4 種の共同と共存をめぐって
  5 樹木の相互作用と社会性

Ⅴ-3 森林群集論
  1 森林群集論の枠組み
  2 歴史性
    2-1 種分化
    2-2 系統的放散
  3 生態的統合
    3-1 森林における生物間相互作用
    3-2 森林群集における種間関係
  4 系統と生態との関係 —— ブナ科とカエデ属を例に

終 章 系統生態学の展望

 引用文献
 あとがき
 事項索引
 和名索引


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