内 容
<専門家 vs 素人>を超えて ——。科学技術の浸透した世界で物事を決めるとき、専門家を無視することも、絶対的に信頼することもできない。では専門知とは何か。会話や「農民の知」から、査読や科学プロジェクト運営まで、専門知の多様なあり方を初めてトータルに位置づける。対話型専門知の可能性に光をあて、現代社会に展望をひらく名著。
著訳者紹介
(所属等は初版第1刷発行時のものです。)
【著 者】
ハリー・コリンズ
(Harry Collins)
英国ウェールズのカーディフ大学教授。30年以上にわたって重力波物理学の社会学的研究に取り組み続ける「科学的知識の社会学」の泰斗であり、1974年のデビュー論文以降、様々な領域の著者たちとの共同研究を重ねながら、科学的知識の真相を求めて膨大な数の論文と著書を世に問い続けている。日本でも、科学技術論の事例紹介がなされたトレヴァー・ピンチとの共著、いわゆる「ゴーレムシリーズ」をはじめ3冊が邦訳されている(福岡伸一訳『七つの科学事件ファイル —— 科学論争の顛末』化学同人、1997年、村上陽一郎・平川秀幸訳『迷路のなかのテクノロジー』化学同人、2001年、鈴木俊洋訳『我々みんなが科学の専門家なのか?』法政大学出版局、2017年)。
ロバート・エヴァンズ
(Robert Evans)
英国ウェールズのカーディフ大学教授。労働市場における社会的交換を論じた1996年のデビュー論文以降、持続可能なエネルギーの都市への導入に際する地理情報システム利用の問題、遺伝医学の政治性、英国政府への経済予測の専門的アドバイスの問題、ヨーロッパ通貨の一元化をめぐる英国内での論争など、多岐にわたるトピックについて科学技術社会論の領域で研究を続けている。
【訳 者】
《監訳者》 奥田太郎
《訳 者》 和田 慈(担当:序章、第4章、第5章、終章、補論)
清水右郷(担当:第1章、第2章、第3章)
目 次
謝 辞
凡 例
序 章 なぜ専門知か
「民衆の知恵」説
正統性の問題と拡大の問題
科学主義
本書の構成
第1章 専門知の周期表(1)
——遍在専門知と特定分野の専門知
周期表の導入
遍在専門知
遍在暗黙知だけを伴う専門知
科学の通俗的理解
特定分野の暗黙知を伴う専門知
貢献型専門知
対話型専門知
特定分野の専門知間の関係性
対話型専門知、および、対話能力と熟慮能力
専門知の獲得 —— 5種類の対面知識伝達
第2章 専門知の周期表(2)
—— メタ専門知とメタ基準
外在的判断 —— 遍在的識別力
外在的判断 —— 局所的識別力
専門知についての内在的判断とそれらの諸問題
ホラ吹き、ペテン師、信用詐欺
専門的目利き
下向きの識別力 —— ピアレビューとその変種
投射型専門知
メタ基準 —— 諸々の専門知を判断するための基準
専門知の周期表をもう一度まとめる
分類にまつわる諸問題
第3章 対話型専門知と身体性
社会的身体性論と最小限身体性論
マドレーヌ
言語習得前聾者
対話型専門知と実践的成果
身体とレナートについての覚え書き
第4章 言行一致
—— 色盲、絶対音感、重力波についての実験
手続きと結果 —— 概念実証実験
結 果
色盲と絶対音感についての結論
対話型専門知と科学
全体の結論
結 び —— 校閲テスト
第5章 新しい境界設定基準
科学を科学でないものから区別する
科学と政治の境界を定める
科学と疑似科学の境界を定める
終 章 科学、市民、そして社会科学の役割
補 論 科学論の幾つかの波
第三の波と第二の波の違い
第三の波と第一の波の違い
監訳者あとがき
注
参考文献
索 引
書 評
『科学史研究』(2022年10月号、第Ⅲ期第61巻第303号、評者:原塑氏)
毎日新聞(2020年12月12日付、読書欄特集「2020 この3冊 上」、評者:内田麻理香氏)
『図書新聞』(2020年10月10日号、第3466号、評者:種村剛氏)
朝日新聞(2020年6月25日付、「あすを探る 科学技術」(内田麻理香氏))
関連書
『科学技術をよく考える』 伊勢田哲治・戸田山和久・調 麻佐志・村上祐子 編