内 容
科学的知識は信頼できるのか? 科学技術の負の側面は様々に指摘されるが、科学の営み自身は否定しにくい。ではそれはどう正当化されるのか。科学の核心にわだかまる問題を、諸説を見事に整理しつつ知識のあり方を捉え直すことで解決。新たなスタンディングポイントを示す渾身の書。
目 次
序 章 科学的実在論論争とは何か —— 論争の原型
1 科学的実在論論争とは何か
2 科学的実在論論争の起源
第Ⅰ部 論争はいかにして始まったか
第1章 還元主義と消去主義
1 論理実証主義はいかに科学をモデル化したか
2 還元的経験主義とその破綻
3 消去的道具主義の栄光と没落
4 結局、論理実証主義とは何であったのか
第2章 奇跡論法による実在論の復興
1 実在論的転回と奇跡論法
2 奇跡論法のいくつかのバージョン
3 EDRへの批判とそれへの応答
4 科学の成功を安上がりに「説明する」試み
第3章 悲観的帰納法による奇跡論法批判
1 悲観的帰納法
2 いくつかの事例の説明
3 悲観的帰納法に抵抗する
第4章 ケーススタディ —— 熱素説
1 熱理論史の概略(1)—— 熱素説と熱運動説
2 熱理論史の概略(2)—— 熱力学の成立とエネルギー保存則
3 熱素説は「成功していたがラディカルに間違っていた理論」なのか
第5章 構成的経験主義からの実在論批判
1 不可知論的経験主義と観察・理論の区別
2 洗練された不可知論的経験主義としての構成的経験主義
3 構成的経験主義を批判する
第6章 決定不全性概念への反省
1 デュエム・クワインのテーゼ
2 決定不全性は反実在論の支えとなるか
3 スタンフォードの「新しい帰納法」は新しいのか
第Ⅱ部 論点は多様化し拡散する
第7章 対象実在論
1 カートライトの『物理法則はいかにして嘘をつくか』
2 ハッキングの介入実在論
3 対象実在論へのコメント
第8章 構造実在論
1 構造実在論とは何か
2 認識的構造実在論への批判
3 存在的構造実在論
4 存在的構造実在論への批判
5 構造実在論はそもそも悲観的帰納法を回避できないのではないか
第9章 半実在論
1 これまでの選択的懐疑論に対する不満と学ぶべき教訓
2 構造とは何かを考え直す
3 半実在論とはいかなる立場か
4 半実在論と悲観的帰納法
5 まとめと残った問題
第Ⅲ部 論争を振り返り、未来を展望する
第10章 公理系アプローチからモデル中心的科学観へ
1 科学理論についての公理系アプローチ
2 科学におけるメタファーとモデルへの注目
第11章 モデル中心的科学観と実在論論争
1 理論の意味論的捉え方
2 科学の多様な表象戦略と意味論的捉え方の拡張
3 ギャリーの構成的実在論と観点主義
第12章 擁護に値するミニマルな実在論
1 構成的実在論をさらに展開する
2 構成的であることの意味
3 構成的実在論は実在論なのか
終 章 科学的実在論論争とは何であったのか、また何であるべきか
1 懐疑論論駁としての実在論論争
2 科学的実在論論争の存在そのものが説明されるべき事実である
注
あとがき
文献一覧
索 引
書 評
『現代思想』(2018年4月号、第46巻第6号、評者:加地大介氏)
『週刊読書人』(2015年12月18日号、第3120号、評者:貫成人氏)
『図書新聞』(2015年7月18日号、第3215号、評者:石原千秋氏)
著者の既刊書
『誇り高い技術者になろう[第2版]』 黒田光太郎・戸田山和久・伊勢田哲治 編
『科学技術をよく考える』 伊勢田哲治・戸田山和久・調 麻佐志・村上祐子 編
『自由の余地』 ダニエル・C. デネット 著/戸田山和久 訳
関連書
『専門知を再考する』 H・コリンズほか著/奥田太郎 監訳/和田 慈・清水右郷 訳
『客観性』 ロレイン・ダストン,ピーター・ギャリソン 著/瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳